12月1日(火)
そういえばおととしの11月27日に、今の住処に引っ越してきた。
ここではもう散歩には出られないし、
窓も前みたいには開けられないので、
なるべく精神的負担を減らすためにコチカを去勢した。
あれから2年。
コチカは、
すっかりここの空間にも馴染み、自分の居場所をあちこちに確保した。
窓からベランダを眺めた後に私のところにきて、
にゃー、と言うことがあって、生活の中でのパターンとは違う鳴き方に、
前の家のことを言っているのかも、と思うことはあるけれど、
洗面台の左側には窓があったはずなのにない、と何度も見に行くこともなくなった。
これから先、ここでの生活の中で、
前に散歩をしていた頃のことを懐かしむことができて、
惰眠の間の思考の楽しみになるのなら、
コンクリートで固められた住処に移ったのもさして悪くはなかったということだろう。
これは地べたに直に建つ一軒家に住むことを切望する私ら人間にとっても、
勇気付けられる事実ではある。
大きな道路沿いなので、少しでも空気を清浄化しようと、
ごく単純な気持ちで部屋の中にグリーンをいっぱい置いたのはいいが、
参ったことに、植物は成長するのであって、
元気いっぱいに背も伸び、葉を増やしていく生命力に驚きつつ、
半日係りの株分け作業はああ面倒だと思ながらも、
季節の象徴として日常のアクセントとなっているし、
何より、植物がそばにあると、目も気持ちもなごむ。
人間だけではなく、コチカも悪くないと思っているだろう。
前の家だと窓さえ開ければ、よそのお宅の庭の緑が見えたので、
部屋の中には切花くらいしかなかったことを思えば、
今の方が、植物が出すマイナスイオンの恩恵を賜っているかもしれない。
結局、どこに住んでも努力次第で、お城となりえるわけなのですね。
* * * *
▲
12月3日(木)
折り曲げた左右の親指を器用に組み合わせ、
ほらーと言いながら離すと、1本の親指の関節が指先と指元(?)に離れたように見え、
おー(驚)、と思える戯れを、子供の頃、叔父がして遊んでくれた。
私の夫も、私が落ち込んでいるときに、やってくれた。
今ではもう大人の私は、これって全国区?などと気分がすーっと冷めただけだけれど、
夫の指は長くて大きいので、それなり迫力があり、おー、と思え、落ち込んだ気分がかく乱された。
今でも忘れた頃にやってくれる。
でも、もういい、やってくれなくて、と思う。
で、コチカも?
* * * *
▲
12月4日(金)
昨日の夜。
人間はお風呂に入ろう、という頃で、コチカにとってはおしっこタイムである。
コチカは珍しくダイニングテーブルの下にいた。
夫が、コチカ、オティッコトゥールヨ、と近づくと、
逃げるスペースがあるものだから、
あわよくば逃げようと、すぐに動けるよう体勢を整えた。
夫が腰をかがめながら、コチカー、と近づく。
コチカは、じりじりと奥まった方へ移動する。
夫はかがめた腰を床におろし、オティッコトゥールヨ、言った。
すると座った格好の夫から、かいかいしてもらえる雰囲気が漂ったか、
コチカはふらふらと出てきて、頭をかいかいの高さに下げながら、夫に近づいていった。
コチカ、何言われてるのかわかってるのかなー、
と夫がコチカに手を伸ばす。
飛んで火に入る夏の虫。
なんとも苦笑してしまう事態である。
果たしてコチカは、夫に抱き上げられ、オティッコに連れて行かれた。
不憫なな・・うぅ。。
* * * *
▲
12月6日(日)
あたたかみ。
ありがたみ。
もこもこみ・・・???
あふれさせる光景
* * * *
▲
12月8日(火)
<っしあっわせーってなんだーっけなんだーっけ♫>
人間が起きて来る頃、
コチカはベランダ側に置いた籐椅子で朝陽を浴びている。
この数日暖かで、穏やかな日が続いているので、
毎朝、美しい冬の朝陽の中で、ぜいたくな時間を過ごしている。
なにしろ健康的なのだ。
暑くなく、湿気が少なく、ネコにとっては過ごしやすいのだろう。
よく眠るし、よく運動するし、よくおなかが空く。
朝からご飯をねだるので、7粒ばかりあげる。
でもまだ足りないコチカは、ひょっとして、と期待を込めて、
そろそろとご飯の器に近づく。
くんくんと確かめてみるけど、ない。
かわいそうに、お皿舐めてる、と夫が朝の紅茶を飲みながら笑う。
すると、カリッ、と快音が聞こえた。
あ、1個見つけた、と首をすくめてまた笑う。
そのうち、ぴちゃぴちゃぴちゃ、とお水を飲む音がし、
よかったよかった、と人間二人が思う。
で、ちゃんちゃん。
どうということはないのだけど、
なんだかいいのです、そういう朝。
* * * *
▲
12月9日(水)
久々の曇り空。
冷たいです。
クッションは、中身の発泡スチロールのビーズが圧縮されてきて、
コチカが載ると大きく窪むようになってきた。
体勢を整えるときこそ不自由そうだけれど、
いざ居場所が決まって丸くなればこっちの(コチカの)もの。
窪みにかっちりはまって、それはそれは気持ちよさそうなのだ。
ぬくぬく・・
* * * *
▲
12月10日(木)
<言うなれば変則的>
おとといだったか、
またコチカはソファの上からクッションごと転げ落ちた。
それでたぶん3回目だろうと思う。
それなりにいろいろ学習した。
クッションはときどき落っこちるけれど、居心地いいので、めげることはない。
クッションに載る際に、中のビーズの按配を気にして載れば、大丈夫。
人を経由する場合は、なるべく遠くへ飛ぶ。
人を経由せず、床から直接載るときには、
まず両手をかけて、クッションの傾き具合を測るべし。
・・てなことを考えるようになったコチカは、
前よりもうまくクッションに載るようになった。
床からにすべきか、私を経由すべきか、も思案する。
私も朝、クッションを整えるときには、
細心の注意を払って、クッションを置き直す。
クッションは大きく、おにぎり型で、
とんがり部分よりもお尻が大きく、厚みが均等ではないので、
狭いソファに置いてネコをくつろがせる、
という変則的な使い方をするには、かなり気を使うのである。
この秋、クッションに関しては互いに成長したと思う。
* * * *
▲
12月11日(金)
朝。
目覚ましが鳴った。
頭が覚醒すると、コチカがわきの下にいるのがわかった。
布団を上げると、かっちり丸くなって熟睡している。
ふわふわとして、なんて暖か。。
う、動きたくない、けれど起きなきゃ、
でも、起こすわけにはいかない、と思い、
そうっと起きようと、ちょっと動いただけなのに、
はっと気づいたコチカは、すばやい身のこなしでベッドから降り、
私の顔を見、もう起きるのね、と寝室を出て行った。
すごいな、ネコって、と思う。
熟睡していた体で、よく一瞬のうちに当たり前に動けるものである。
私などがまねしたら、ベッドから転げ落ちてどこか捻挫したり打撲するのが関の山だけど。
* * * *
▲
12月12日(土)
私を経由して、クッションにうまい具合に載ったコチカに、
上手に載ったよ、と声をかけると、
載った向きのまま、え?とコチカは固まる。
耳がピーンと私の方へ向き、
大きく開かれた目が、顔中の筋肉に引き上げられるので、
白目部分が増え、白目で私を伺っているみたいである。
コチカは、上手に載った、という意味をまだ知らない。
でも一生懸命わかろうと、息を飲んで集中する。
真ん中に上手に載ったよ、とクッションをポンポン叩きながら言ってみる。
柔らかく笑いながら人の言う、上手に載った、という言葉が、
いいことなんだ、という程度にわかってくれたら、と思う。
* * * *
▲
12月13日(日)
今日は失敗。
時間の問題で床に転げ落ちるパターン。
手前の人間が座る側へも傾きすぎている。
今のところ、右手の爪を引っ掛けて、うまく収まってはいるが。。
* * * *
▲
12月15日(火)
お昼。
眠りから覚めたコチカは、何度も舌で口の周りを舐め回している。
こんな様子は滅多に見ない。
口の周りと言うよりは、鼻から通った空気が口の中を乾かすのかも知れない。
リビングの湿度が30%とひどく空気が乾燥しているのだ。
加湿器を置けばいいようなものだけど、
家電をこれ以上増やしたくないので、
濡らしたタオルを数枚、かけておいたりするが、間に合わないようなので、
今日は、洗面器にお湯を入れて置いてみた。
すると9%は上昇したので、少しはいいのかも知れない。
ネコは砂漠にいた動物だというが、
現代に生きるネコもその遺伝子を受け継いでいるのだろうか。
どのくらい乾燥に耐えるのだろうか。
夏の50〜60%の湿度よりはましだろうけれど。
* * * *
▲
12月17日(木)
おしっこをさせてもらったコチカは、
私のところにやってきて、なぜか舌をペロペロしている。
ときおり、顔の筋肉を上に上げるのか、鼻にしわがよる。
それで懸命に口の中の掃除をしているんだなと思うのだけど、
ちょうどそのタイミングで、息を鼻からフッと強く吐いたのだろう。
しわが伸ばされて鼻が膨らみ、一瞬ではあるが、すごくおかしい顔になった。
思わず噴出したけれど、
そんな顔するんだね、コチカ。
知らなかったよー
* * * *
▲
12月18日(金)
オシッコさせようと、
クッションで丸くなっているコチカを持ち上げると、
必ずのびをする。
今までは、わきの下から手を入れられて、
前に伸ばした両腕を、うーんと伸ばすだけだったけれど、
だんだんエスカレートしてきて、
両手をぱーっと開いて、真上にピーンと伸ばすようになった。
毛がするするなので、つかんでいるのが難しく、取り落としそうになる。
とりあえず体をそらして、コチカをおなかに押し付け、
頃合を見て手をわずかに離し、よっ、とばかりつかみ直す。
最近は1日に2回、これを見るのが楽しみだ。
何を信用して、こんなことするんだろう。。<夫
* * * *
▲
12月19日(土)
明け方、なにか寝辛く、とうとう頭を上げて周りを見渡すと、
暑いのか、夫が布団を私の方に押しやっていて、
あれはきっと背中を出して寝ているに違いない、
まったくもー風邪引くよ、と思いつつ、
自分の側の布団をめくってみると、
私の脇の下で丸くなっているはずのコチカは、
なんと私の胸に頭をもたせかけて、
体をびろ〜んと伸ばしてベッドの端まで足が届いている。
コチカはじわじわと私を真ん中に押しやっていたのだ。
縦に寝るべきベッドに横に寝るなんて、言語道断なんだってば!
もーねー。。
みんな自分のことしか考えてないんだから。。
* * * *
▲
12月20日(日)
<バンザイが止まらない>
おてぃっことぅーるよ、と夫がコチカに近づくと、
私は携帯のカメラを構える。
しばらくはやめられそうにない日常の楽しみ。
* * * *
▲
12月22日(火)
子供の頃の私が、
あンのころーは、ハッ!ふったりとーもっ、ハッ!
と、
君がー望むなら(ヒデキーっ)、
の二つのナツメロを、
頭の中でどちらを歌うべきか競り合っていて、
非常に窮屈な思いで目が覚めた。
私はクッションの枕にもたれかかっていてうたた寝をしていた。
なんと、手にコチカの足先を握っている。
コチカは足先を触られるのが嫌なのに。
たぶん寝返りを打ったときに、
クッションの上に置いていた私の手の中にもぐりこんだのだろう。
で、
なんで妙な夢を見たか。
小学生の頃、私の家では旧式の扇風機がまだ現役で、
扇風機の羽の速度を替えるボタンは、
扇風機の足元・・というかスタンド部分になく、
後ろ側から伸びたコードに、回転式の切り替えボタン(?)がついていて、
それは手に握りやすい大きさのマイクの形をしていた。
これが格好の私の遊び道具で、
そのマイク型切り替え部分を、まさにマイクにして、
テレビの中でマイクスタンドを蹴っ飛ばして歌う歌手のまねをしていたのだ。
鏡の前で。
これは結構エキサイトできる遊びだった。
コチカの足先を握っている手の形は、
子供の頃、扇風機のマイク型切り替え部分を握っているのと、そっくりである。
なのでそれが夢の中でよみがえったのだろう。
もう今ではできないことだし、
どうせだから2ついっぺんに歌わせろ、ということだろうか、
2つの歌がもめあっていた。
あーもーやめてー、と手を振り回したりして、コチカをぶん回さなくてよかった、とほっとしたが、
いやー、懐かしいものを思い出させてくれて、
ありがとうね、コチカ。
* * * *
▲
12月23日(水)
来客。
クッションの上で、
掃除や片付けに大慌ての人間に、
不穏な気配を感じ取っているだろうコチカに、
今日、○○さんがくるからね、
こんにちは、って言ってね。
もう帰るようにいって、とか言いに来たらだめだからね、
と言い含めておいた。
夫の友人は、物腰の静かな人で、
コチカは、最初こそ窓際の植木の向こうに隠れていたが、
そろそろと出てきて、あたりをうろうろした後、
すーっと来客の足元に来て、
あらあ珍しい、そばに寄った、などと言っていると、
3回目に通ったときに、すりすり、とした。
そして、もう一回、ちょこっとだけど、すりすり。
さっと手を伸ばしたお客さんは、あ、触れた、と言った。
珍しいこと。
もしかして、こんにちは、って言ってね、という言いつけを守ったのだろうか。
まさかねー
でもそうかも知れないので、
いちおう、こんにちは、って言ってくれて、ありがとう、と言っておいた。
コチカは目をぱちっと開いて、私を見ていた。
またしてね、こんにちは、ってね。
* * * *
▲
12月24日(木)
夜中。
私の脇の下に丸くなっているコチカに、
おしっこしたいからちょっとどいて、というと、
いやだー、とばかりに体を押し付けてくる。
戻ったらまたこうしようね、
と3回も言いながらコチカを引き剥がし、ベッドを降りる。
こんなことをしていると、目が覚めてしまう。
本当は夢うつつのままで行ってきたいのに。
* * * *
▲
12月25日(金)
コチカはクッションに飛び乗るのがうまくなった。
飛び乗った際に、うまい位置に着地しなかった場合、
後足を真ん中に動かしてやり、
ここ、ここ、ここが上手なの、と言っていたら、
今では確実に真ん中に乗る。
そして、どう?という目をして、そのままの格好でいる。
私がコチカを見ないでいると、みゃ、と小さく呼ぶ。
上手に乗ったよ、と言いながら撫ぜてやると、
やれやれと腰を下ろす。
ところが今日くらいから、
真ん中より、もうちょっと向こうへ飛び乗るようになった。
あんまりそっちに行くと、落っこちるよー
* * * *
▲
12月27日(日)
これ以上電化製品を増やすのもナンなのだからと、
洗面器にお湯を張って置いていたが、
なんとも格好つかないし、誰かが余分な量のお水を飲んでしまうので、
(こないだなんか、ご飯を食べた後、ご飯の隣のお水も飲み、
洗面器のお水も飲んだ後、盛大に嘔吐した。
クッションの上で。
もうサイテーだった。)
やはり予定を変更して、加湿器を買った。
邪魔にならない所に、と隅に置いたのがいけなかった。
エアコンの風向きによって、蒸気がクッションの上に降りてくる。
それが不気味なのだ、コチカには。
床から長いこと観察し、
私の膝に乗ってもじっと見て、
そろそろとクッションの上に足を踏み出しながら、くんくんと臭いを嗅ぐ。
なんにもにおわない・・というところが、また解せないらしい。
なにこれ、危なくない?
* * * *
▲
12月28日(月)
昨日、明日お母さん来るよ、と3回くらい言ってきかせた。
こんにちは、って言ってね。
もう帰るように言って、なんて言わないでね。
と言うと、
へ?という顔をしてたが、
今日、実際に来た母を見ると、
なんの感情も感動もわかないような顔をしていた。
幸い、母はばたばた動き回ることもなく、
座ってテレビを見ながら縫い物をしていたので、
コチカは気を良くしたのか、すりすりした。
そうそう。
その調子。
これからしばらく、よろしくね、コチカ。
* * * *
▲
12月29日(火)
<騒々しい思いをする者は幸いである>
血液型O型の人ってこうなのか。
母はしゃべりまくるし、夫は動きが派手でうるさいし、
こんな2人と同じ空間にいると、
洗濯機の中でもまれている衣類の気分がする。
そしてコチカも同じ気持ちなのである。
2人がなにやら意気投合して、買い物に出かけるというので、
心ひそかにやったー、と思いながら、私は家にいる、と涼しく言った。
2人が出て行くと、キャットタワーのてっぺんにいるコチカに声をかけた。
待ってました、とばかり、にゃ、と返事をし、目をらんと輝かせる。
こっちおいで、と言うと、即座に降りてこようとしたが、
さっき夫が窓のサッシをどうにかした際に、
不用意に最上階のハウスを動かしてしまい、
降りるのが難しくなってしまった。
困った目を向けつつ、あれー、降りられないよー、
とハウスの入り口に首筋をすりーとしたコチカのかわいいこと!
大丈夫だよ、おいでおいで、と促すと、そこはネコ。
知恵を絞って、新しい回路を思いついて、降りてきた。
ソファに座る私の膝に直行してきて、ぴょん、と飛び乗る。
しーん、と静まり返ったリビングで、しばしすりすりべたべた。
至福のひとときを過ごした。
朝から2人っきりでいる日常とは違い、
うんと騒々しかったさっきと比べ、なんて濃厚な静けさなのだろう。
してみると、うるささに耐えるのも、悪くないものである。
* * * *
▲