2003年10月

~~~ミルク色のコチカ~~~


奮闘記 -29-


 
あくび……見られる人、見る猫



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10月2日(木)

正規の爪研ぎ場所以外のところで爪を研ぐようになってきた。
廊下の絨毯とか。
そろそろ爪研ぎ用に使っている切り売りカーペットを新調すべきか。

夜のお散歩。
チェリーがいて、咆えている。知らん顔のコチカ。
抱っこして近づいてみた。
互いに見合うこと3秒ほど。
やったー。

* * *

また妄想の中にいるのか、やたらと走り回っている。
ちょっとすごい。
去勢去勢去勢去勢去勢去勢。
早くしてやらねば。。




 *  *  *  * 




10月3日(金)

朝のお散歩。
チェリーが門のところまで来た。
うちの大家さんにカリントウをもらいに来たのだ。
門越しにチェリーを見つめるコチカ。
しかし、チェリーの目線は玄関から出てくる大家さんに向けられているので、
コチカには余裕があり、じっとチェリーを観察している。
これでまた距離が縮まったのではないだろうか。

*

コチカもカリントウをもらったけれど、ぺロッと舐めただけ。
地面に残されたカリントウはチェリーの口に運ばれた。
匂いも嗅がずにペロリと食べたチェリーは、さっさと家に向かった。
いつも2つもらうと満足するのだ。




 *  *  *  * 




10月4日(土)

人間につきあってお寝坊。
起きたら夫とお散歩。
チェリーのママがなんか言っているのが聞こえる。
チェリーはコチカが外にいると100%の確立でわかるのだ。
奥さんにしてみても、なにも感じずに家事をしているの最中に、
チェリーがコチカコチカと大騒ぎするのは、やはり驚異なのに違いない。

* * *

お買い物で時間を食ってしまい、
コチカの夕飯の時間が遅れ、ついでに雨が降ってきてしまい、
夜のお散歩はなし。
ごめんね、コチカ。

せめて毛皮のポンポンで遊んでやる夫。
狭い洗面所と風呂場で。
もっと広いところでやれば?ってどこも似たようなものなのだ。




 *  *  *  * 




10月5日(日)


   かわいくないって。
人間が寝坊・多忙だったために、コチカのお散歩もそれなりに。



夜。
夫が散歩に連れていったのだが、
四辻の駐車場に止まっている車のマフラーに顔をこすりつけるのを阻止できなかった。
鼻の左横に、スス。
あーせっかくのきれいな顔が。。
晩酌で酔っ払った夫は、それを気にして何十辺も言う。
きれいになるかな、しみみたいになったらどうしよー。
もーいーってば!!!




 *  *  *  * 




10月6日(月)

雨が降って道が濡れているので、朝のお散歩はお預け。
その余波で、2度の失態。
1度は私が踏んづけた。くー!!!

* * *

夕方も結局行けず仕舞いだったので、異例の深夜のお散歩。
近所のアパートのところに、知らない小柄な猫。
雉トラで両足の下の方、腹などが真っ白。
コチカと見合うこと5分くらい。
体をよじったまま縁石から道路に手をかけているコチカは、
だんだんに足をそろえていったが、そのほかは身じろぎもせず。
向こうもやや、塀に隠れるようではあるが、こちらを伺っている。
私も耐えてみる。
かなり長い。
猫にとってはどのくらいなのだろう。

ときが満ちて、コチカが走り出した。
私も走る。
しかし、相手の猫は走り去った。
悔しがるコチカ。
抱き上げると、フー!!!と思い切り息を吐いた。

*

興奮冷めやらぬコチカ。
チェリーんちのガレージでご飯を食べているニャオンにいきなり、しかける。
飛びのくニャオン。
追えないコチカ。
暗闇を見つめることしばし。
私もまた待つ。

にやお〜と低い声が聞こえるや否や、
暗がりに黄色い陰が飛び出し、道路を横切った。
あの具合の悪そうなニャオンが、なんという機敏な動き。
コチカも反射的に追う。
急激な方向転換のために地面と爪のこすれる音がザザッと聞こえた。
すっごい迫力。

その様子を物陰からそっと伺っていたのは、チェリーんちのペッタンである。
ときおり、暗がりにペッタンの姿が見えていた。
ペッタンの毛皮は明るい上品な黄色である。
ペッタンの体の一部でも見えると、そこだけぽっと明るくなったように思える。




 *  *  *  * 





塀の上にご飯を持ってきてもらったミーちゃん

10月7日(火)

朝、もうすぐ起床だというころ、
コチカが寝返りを打ったので、なんとなく手をやったら、
噛み付いた。

腕から手が寒くなってきたので、ふとんの中に入れようとしたら、
手が濡れている。
やたらと濡れているのだ。
しかしさらさらしている。
変だなと思ったが、私もすぐに眠ってしまった。

しかし、起きてからようく考えてみると、やっぱりおかしい。
コチカは、
両手で私の手を抱えたまま噛み付いた、
その口のまま眠ってしまったらしいのだが、
それで涎が垂れていたのだろうか。
だとして、
あの涎は、ふとんの中でどうしたのやら???

* * *

やはり秋。
よく動くし、よく食べる。
お散歩のあとにもまだパワーが余っているのか、
リードの獲物でひと騒動。




 *  *  *  * 




10月8日(水)

曇りでさして寒くないので、ゆったりと朝のお散歩。
その後、獲物に見立てたリードで一汗。

夜。
臭いを嗅いで手でちょいと触り、舐めようとしたので見てみると、
枯れ葉だと思ったのに、かまきりの死骸。げ〜!!!
次にはなめくじ。あんなものに触ってほしくない。

しかし夫曰く、なめくじには前科があるのでは、という。
ときどきお風呂に立たずんでいることがあるが、
お風呂場にはなめくじがいることがしょっちゅうあるから。

* * *

閉めてある台所の引き戸の上半分はガラスで、
下から透明、すりガラス、透明、となっている。
木の枠に手をかけると、一番下の透明ガラスから、
流しの前に立っている私の顔が見える。

コチカはそこに飛びつき、いぇーい!という感じで気を引き、
私と目が合うと、ダダッと玄関に向かって走り出す。
目が合わせてしまった私がマケなのだ。
追いかけっこに付き合うハメになる。
しかたなく1、2本。
しかし今日はいやにノリが悪いと思ったら、
コチカには他にしたいことがあったのだ。

玄関を上がったところのコート掛けに、コチカのリードが掛けてあるのだが、
走りながら、それに目をやった。
その後、幾度かそうした。
私がそこで立ち止まると、そうそうそれそれ、と言わんばかりに、じ−っと見た。

リードと遊びたいのである。
マケついでに私はしばらく付き合った。
我ながら良い飼い主だと思う。




 *  *  *  * 




10月10日(金)

朝からほのぼのと良いお天気だったので、
デジカメを持っていこうとしたら、フィルターがない。
思い当たるところをあちこち探したが見当たらない。
いったい夫はどこへしまったのやら。

私はいつもフィルターをつけて撮るが、夫はつけない。
自分はときどきしか撮らないのだから、私が使いやすいようにしといてほしいもの(怒)。

* * *

フィルターを探している間に、
外に出たくてたまらないコチカの声が、ほとんど脅しに変わっている。
はいはい、おまたせ。さあ行こう!

外に出てみると、
白いもこもこの猫がチェリーんちのガレージにいて、
最近にしては珍しくタロウとアスカが門のところに並んで座っている。

絶好のシャッター・チャンス!なのに、カメラがない。。

*

一通りうろうろして、
門につないでおいたら、チェリーのママがチェリーをつれてきた。
喜び勇んで飛び上がりながらに向かってくるチェリー。
奥さんは引っ張られ、そっくり返っているし、
面白い2ショットが撮れるチャンスだったのに、カメラがない。。
く〜〜〜夫よ!今夜のビールはなしだぞよ。

チェリーは勢いあまってコチカに飛びつこうとしたが、
もちろん牽制されている。
コチカは身構えたものの、威嚇もせず、すぐにまたゴロリとなった。
またまた進歩。

チェリーには、コチカの他に目当てがある。
うちの大家さんが出てきて、カリントウくれないかな、と思っているのだ。
でも残念ながら、今朝はたまたま大家さんは不在だった。
そうと知ると、意気揚々と来たさっきとは打って変わって、
垂らした尻尾をしょぼしょぼさせながら去っていった。




 *  *  *  * 




10月11日(土)

朝。
目覚めていると、
枕の隣でコチカは、丸くなって座っていた。
なんで寝てないの?

* * *

階段下の窓の網戸を、なにやら声を揚げながら引っかいている。
何事かと見に行くが、猫なんかいないし、なんの気配もない。
はてさて?
コチカの視線の先をよーく見てようやくわかった。
窓のすぐ向こうにあるナンテンの枝に、小さく茶色いカマキリがいたのだ。
こういう色のって毒があるのでしたっけ。
弱っているのか気だるげに鎌を動かしている。
開かなくしてある網戸なのだが、
無理やり開けて、地面に落とした。
その作業をじっと見ていたコチカは、人間が何をしているのかわかったのだろう。
作業が終わるや、もう見向きもしないで玄関の方に走って行った。

* * *

夕方のお散歩。

どうやら10月6日に会った雉トラとグレタは仲良しらしい、と夫。
雉トラはグレタのお尻の臭いをくんくん嗅ぎ、そして寄り添っていたのだそうだ。
いいな。
猫同士仲いいのって。

それを見ていたコチカは少々緊張して向かいの家のガレージに座ること15分。
じっと待っていてやった夫だが、根負けして連れて帰ってきた。

* * *

台所で談笑している人間二人に嫉妬するのか、何度もニャーニャー言いにくる。
そのたびに撫ぜてやるのだが、
そのうちに遊ぼう、と思い立ったのだろう。
台所の引き戸に向こう側から飛びつき、気を引こうとする。
目が合うと、玄関に向かって走るのだ。
こちらが無視していると、ガラス戸のちょうど顔の見える位置に座って
不満気に、にゃ〜〜〜〜と言う。
うるさいので、夫がリードで遊んでやることにした。




 *  *  *  * 




10月12日(日)

コチカが後頭部を私の肩とか首筋とかに押し付けて寝ていると、
もう感謝感激するほどに温かくて気持ちいい。

* * *

遅く起きたら雨が降っていて、お散歩はならず。

外出から帰宅したらすぐにご飯、お散歩。
これは評価が高かったらしい。
その後のウンチも漏らさず申告。




 *  *  *  * 




10月13日(月)

湿度の高く暑い日。
ダニが一匹足に。
さもありなん。




 *  *  *  * 




10月14日(火)

朝はゆっくりお散歩。
火曜日はゴミの日。
コチカを門に繋いでおいて、
通りを家に沿ってのんびり掃除したりする。
急がなくていいってなんていいんだろう。
掃除をする私はなんて良い主婦なのだ、なんて思えたりする。

大家さんも出ていて庭の草取り。その手を休めて、なんかおしゃべりしたりする。
うちの居間の外側の、ちょうどエアコンの室外機があるあたりに、
茗荷の葉が茂っていたのを抜こうとしたら、
地面に茗荷が頭を覗かせているのを教えてもらい、8個ばかり採った。

うちの周辺は茗荷の多い地域であって、
大家さんの庭にできる茗荷をときどきもらったりはしていたが、
地面の頭を出している茗荷を見るのも、実際に採ったりするのも初めて。
感激!

* * *

夜は雨が降っていたので、コチカは何にも言わずに諦めていた。
お利口お利口。




 *  *  *  * 




10月15日(水)

朝にはまだ道が濡れていた。
昨夜も行ってないので、玄関でうずうずしているコチカだけれど、
足が汚れるので、やっぱりお預け。
リードで15分くらい暴れさせる。

* * *

夜のお散歩。
また新顔の猫がいた。
黒っぽい小柄なトラ猫。
グレタのいるアパート付近で。
グレタはひょっとしたらモテるのかも。
性格よさそうだからな。。
どっかの猫みたいにやたらと喧嘩売らないし。




 *  *  *  * 




10月17日(金)

朝。
普通にお散歩。

* * *

夜。
やり合っている声が聞こえる。
十字路の駐車場の奥である。
暗くてよく見えない。
タロウか。そして誰だろう。やはり黄色い猫である。
近所の家の窓が開いて、
おばさんらしい人の声が、にゃー!と威嚇したのがおかしかった。

*

私にリードを引かれ、斜めになったまま見ているコチカ。
きりがないので、抱っこして通りに戻ってきた。
すると、チェリーが外に出されていた。
コチカの姿もないのに、と奥さんの不思議そうな様子が、
シルエットながら伝わってくる。
ここですよ〜!と声をかけたら、
あ、やっぱり〜よくわかったわねチェリーちゃん、と言いながら、
チェリーをつれて、こちらまできた。
私はチェリーによしよし〜とご挨拶。
コチカは、と見ると、視線の先には塀の上にアスカ。
奥さんが、あら、と言って手を出すと、アスカは、あ〜 と言ってお尻を上げた。




 *  *  *  * 




10月18日(土)

朝7時半。
ウンチ〜
なんとか押し込んで^^\ごまかそうとしたけれど、ごまかされようもなく。
しぶしぶ、お利口お利口、と言いながら下に行く。
おっそろしく大きなウンチ。
これじゃあごまかせないワ。。

*

土曜日なので、またふとんにもぐりこむ。
あれっコチカが脱走したー の声で起きる。
11時前。
洗面台の網戸を開けて出ていったらしい。

悪い予感がしなかったどうか、
悪い夢を見なかったかどうか、
寝ぼけた頭の中を一生懸命まさぐる。
特にない。
ま、いっさいっさ。無事帰ってくるさ、と思いながら、
着替えて下に行くと、
夫が、かつおぶし?などと言っていて、足元をコチカがうろうろしている。
もう帰ってきたの???

夫はコチカの脱出に気がついてから、
しばらくは帰ってこないだろうと居間に戻ったら、
みゃーみゃー鳴く声が聞こえるので、
窓から外を見ると、駐車場の塀の上でコチカが鳴いていた。
その塀というのは、コチカが出ていった窓のそばにある。

コチカは……ああ情けない……なんと、降りられなくて鳴いていたのだ。
夫が出ていくと、鳴きながら塀の端っこまで来て、
当たり前に抱っこされて、捕獲されたのだそうだ。

もう帰ってくるつもりで戻ってきたものの、
降りられなかった、のだろうか。
なぜ?
塀のこちら側にはうちの車があり、
コチカは居間の窓から他の猫が車の上を行き来するのを、
いつも目にしているはずなのに。
塀から車までさして高さがあるわけではないのに。。

*

で、結局、家に帰ってきて、カツオブシなんかもらっている。
きったなくなって、人相が悪い。
脱走して帰ってくると、いつもこうである。
ドロボウ(草の実で、衣類にくっつくアレ)を顔の横にいっぱいつけて、
真っ白いひげまで、縞々に汚れて。
なんとなく体全体が灰色。
体が汚れるのはわかるが、
人が変わったように顔つきが変わるのは、なんでだろう。

チェリーんちのペッタンなんか、
どこにいても同じ、上品な顔しているのに。

* * *

おなかのあたりに赤いダーさん(ダニ)が。

* * *

どうもネズミが気になるらしい。
人間には聞こえない物音にも敏感に反応し、どこかに飛んでいったりする。

  




 *  *  *  * 




10月19日(日)

夜中中ふとんの中。
朝方にウンチ。

夕方のお散歩後、嘔吐。
どう見ても消化しそうにない細く枯れた茎とか。
いつも散歩の際には草を食べるのが楽しみらしいのだけれど、
これから冬になったらなくなってしまう。
どうするのだろう。

* * *

左の口の牙のせいだろうか。
傷ができている。
外に行ったときに怪我でもしたのだろうか。
昨日は気がつかなかったが。




 *  *  *  * 




10月20日(月)

朝方、ご丁寧に二度までもウンチ。
大丈夫大丈夫、とごまかそうとしても、ぴょこりとふとんの上に座って、
ウンチ〜と言う。
あーこれから冬になると辛くなってくる。。

* * *

朝。
どういうわけかお散歩に行くのを忘れていた。
そういえばコチカに2度ほど声をかけられたように思うが、
あのときいったい私は何を考えていたのだろう???




 *  *  *  * 




10月23日(木)

朝は、夜中の雨で道路が濡れていたので、
お散歩できなかった。
ずっとふて寝しているコチカ。

コチカのふて寝している様子には本当に気が重くなる。
目を閉じているだけなのだが、明らかに不幸せそうなのだ。

* * *

ずっと晴れていたのに、
夕方になってまた雨。
雷ゴロゴロの激しい雨だけれどすぐに上がった。
しかしコンクリートの道路は雨に濡れてつやつやしている。。
うーん。
気の毒なので、抱っこして10分ほど外に出た。




 *  *  *  * 




10月24日(金)

ウンチ〜早く〜、と朝の5時。
2度目には、遊びに行きたいのだろうと勘違いした夫に一喝された。
私がさっさと起きないのがいけないのだけど。。
びくっとした後もウンチ〜早く〜と訴える。お利口というべきか。

* * *

朝。
のんびりお散歩。
アスカに会った。
目が合うと、チャコちゃんちのガレージに消えていった。

チャコちゃんちの奥さんとお話。
ここのお宅は3-5日ほどの周期で植木のレイアウトが変わっている。
とても熱心に植物を育てていて、前を通るのが楽しみだ。
しかし、縁石に沿って水の入ったペットボトルが並べてあるのが、
私はこれを猫よけだと思っていたのだが、コチカは平気でその上に乗って、
上に垂れている植物なんかをくんくんしているので、
ちょっと聞いてみた。
これは何のためですか。

そうしたら、猫よけではなくて、犬よけなのだそうだ。
野良犬なんていないから、飼い主がお散歩に連れてくる犬である。
土があるとその上にウンチをし、掻いておく。
チャコちゃんちの奥さんが朝起きて外へ出てみると、
土がぶわぁ〜っと道路に散らかされていて、
もーはずかしいのよー、と言っていた。
なんという失礼な飼い主だ、と思ったが、
それでも奥さんは、
やっぱり自分ちの動物はかわいいからさ、放っておくんだろうねえ、
なんて優しい顔で笑っている。

この辺がこんな人たちばかりでよかった。
こういうことが元でけんかしたり、そればかりか殺人沙汰になることだってあるのだから。
しかしだからモラル違反して良いってことはないのだが。

* * *

夜もめでたくお散歩。
その後も遊ぼう遊ぼうと活発なこと。
夕方あげたご飯も寝る頃にはなくなる。
ちょっと体が重くなってきた。

ウンチの粗相もなし。
コミュニケーションがうまくいっている証拠。

*

お散歩の途中、
アスカを追ってチャコちゃんちの角を曲がって様子を伺っていたのだが、
向こうから見知らぬおばさんが来た。
ようやく近づいてきた、というところで、
私はコチカに行こう、とコチカに声をかけつつ右足を一歩踏み出した。
ちょうどそのとき、どうすべきかと思案気だったコチカが急に踵を返して戻ろうとし、
おばさんがいたから勢いがついていたのだろう、コチカの額が私のすねにゴン!と当たった。
痛って〜
弁慶の泣き所が痛かった……ということはコチカは?
大丈夫なようだった。。
しかし、効いていたと思う。
頭を振っていたし。
人間のすねに頭突きした日にゃ、猫はやっぱり負ける、ですよね。




 *  *  *  * 




10月25日(土)

夜中に2度ほどウンチ。
ここのところ毎日。
だんだん寒くなるし、これからが憂鬱。

* * *

人間と一緒に遅い時間にのそのそ起きてくるコチカ。
朝のノルマを無事こなして、人間は外出。

* * *

みゃあみゃあ、と甲高い子猫の声が聞こえる。
外にいた近所の子供に、どこで聞こえる?と聞いてみたら、
あっちの方で箱に入ってた、と指差した。
また捨て猫?

夕方を過ぎたら、うちの門の内側に、猫缶のキャット・フードが山盛りになっていた。
なぜ?
うちの大家さんはそういうことはしないし。。




 *  *  *  * 




10月26日(日)

最近、お散歩から帰ってきても、満足しなくなった。
カツオブシをもらってしばらくすると、
必ず、遊ぼー!と廊下から声がかかる。
そして、追いかけっこを何本かと、
リード遊びをしばらくしないといけない。
時間を計ってみると、20分ほどやっている。
お散歩に20分ほどとお遊び20分ほど。
1日2回だから、80-90分ほどそんなことをやっているのだ私は。

しかし、台所のガラス戸の向こうに座るコチカの強烈な視線には勝てない。
あれに勝てる人っているのか。
思いっきり力を込めて見ているのである。
人間の横向きの顔を凝視し、遊ぼうビームをがんがん送る。
これぞ"気"である。
視線に気付いてコチカの方を向くと、
すぐには目をそらすことができないくらい、強力な眼力なのだ。
もちろん毎日のことであるから、多少は慣れる。
その慣れから3度くらいは無視するのだが、
それでも無視しているつもりの間、
なんとか時間を作ってやれないものか、と脳ミソが思考してしまう。
ほんの3分でも……を思ったあたりで完璧な敗北を感じ、
脱力感と共に足がコチカの方向へ第1歩を踏み出してしまい、ガラッ、とガラス戸を開けている。
背を丸めて猛スピードで走っていくコチカを目にしたときには、
もうすっかり"コチカと遊ぶ"モードに嵌められている。。

こんな私を気弱だとか、飼い主バカだと思うなかれ。
そんな風に負けてる人は結構いると思う。
気付いていないだけさ!




 *  *  *  * 




10月27日(月)

夕べコチカは寝に来たのだろうか。
朝方、何度も起しにきたけれど。
早い時間から外に出て行きたくてしかたないのだ。

* * *

コチカになんとか言葉をわからせようとしている。
「もうちょっと待ってて」
「○○(夫の名前)が連れてってくれるから」
というのを何十回も言うのである。
コチカは、ナニあるか?というような顔をして、
じっとこちらを見ている。
もうだいたいわかってきたのではないだろうか。
しばらくは……ほんのわずかな間だけど……静かにしているので。

そうなってくると、ますます裏切れない、という気がする。
もうちょっと、と言ったのなら、あまり長くは待たせられず、
本当にもうちょっとにしないといけない。




 *  *  *  * 




10月28日(火)

夜中からどしゃぶり。
朝のお散歩はお預け。

お利口コチカは、朝、ちゃんとウンチを言う。
決まって6時20分ごろ。
どうしてそんな時間に決めたの?って、んなわきゃないだろうけど。




 *  *  *  * 




10月29日(水)

日に何回も遊ぼうと誘う。
そのうち2回は付き合う。

スポーツの秋だからか、
お散歩だけでは飽き足らず(これは全然スポーツになっていないけど)、
帰ってきてしばらくすると、遊ぼう!と台所の引き戸にぶら下がって、誘う。

夕方は、ご飯があるからそれでごまかされるようだ。
しかし夜にまた走りまわらされる。
追いかけっこを3本くらいに、リードでの獲物遊び。
なんだか私はもう飽きているのだけど。。

こうして猛るのも、まだ去勢をしていないからだろう。
去勢しないのは、コチカはマーキングをしないのでその被害を感じないから
というのもあるし、手術というだけで人間がびびってしまうからであり、
要するに、人間の都合でしてやらないのだけど、
ときどき思うことは、
若いうちにこうして運動できるのはいいことなのではないか、とも思うのだ。
特にコチカは足腰が弱いし。
居間の物見やぐらで寝ていて、起きたばかりのときには、
下に下りてくるのに、あらよ、どっこいしょ、とばかり、
スムーズに猫らしく下りられないことがあるのだ。
ちょっとでも鍛えておいた方がいいような気がする。やっぱり。




 *  *  *  * 




10月30日(木)

夜のお散歩。
門を出て左に折れたところの庭のフェンスからはみ出た菊の葉に、飛びついた、と思ったらふと静止。
一瞬、いやあな予感にゾッとなっていると、
こちらを向いたコチカの口の右と左にはあわれヤモリの頭と足。。
コチカ何を……!の叫び声も途中までで息と一緒に飲まれてしまった。
もう呆然と見ているしかなかった。
バリッ、バリバリ。
ああ、なんの音かは知ってはいるけど言葉にはできない。
ポタリと落としたヤモリの尻尾がなくて、
最悪な事態が起きたらしいが大丈夫尻尾は切られるもの、
と代々受け継いだ遺伝子が告げる通りヤモリは懸命に逃げようとするけれど、
尻尾以外にもコチカの刃は、どこかにささったに違いない、もはや虫の息。

なのにコチカは、まだまだ許しはしない、力を振り絞ってもがいてご覧もてあそんであげるから、
とばかりに前脚でちょいちょいと右へ左へ。
あーもう我慢がならない、とリードを引っ張ったところで、
コチカは再度獲物に噛み付いた。がぶり。
またもやバリリバリリと不穏な音。
相当に噛み応えがあるのだろう。
いつも以上にしっかりと顎をかみ合わせているのがわかる。
私はもう胸が悪くなっていて、立っていると眩暈がするので、しゃがんだ。
コチカはすっかり食べてしまっても、まだ残骸が落ちてはいないかと地面をくんくん嗅ぎまわっている。
ああ誰か来て。
この猫はうちの猫じゃありません。

世間では飼っている動物のことを人間の子供みたいにして、
自分のことをパパとかママとか言うが、じょーだんじゃない!!!
私はこんな獣の親なんかじゃない。
障害を負って私のところにくるという運命を背負った猫なのだ。
単っっなる同居猫。
んもー。
だから動物を飼うのは嫌だったのだ。
あれが夕暮れでなくてドロの水溜りがなければ私はこんな猫を拾わなかった!

足がじんじんしびれてきたので立ちたいのだがまだ立つ自信がなかった。
できれば嘔吐したかったが、そんなわけにもいかない。
連れて帰るのに、コチカのおなかを触るのも気味が悪い。
ふかふかの上等の毛皮の中には"洗い"が進んでいる洗濯槽のように、
変わり果てた姿のヤモリがさっき食べたキャット・フードと一緒にもまれ、さらに形を変えていっているのだ。
胸の悪さを我慢していると眠くなってきた。
目をしょぼつかせていると涙が出てきた。
誰か来て。。

今夜も当然何度かウンチをするだろう。
おしっこさせるときにもウンチが出るだろう。
また白いのだろうか。
あーもー死にたい。。




 *  *  *  * 




10月31日(金)

暖かい朝。気持ちのいいお散歩。

チャコちゃんの奥さんに、猫が食べる草を植えた植木鉢をいただく。
チャコちゃんも食べていたのだが、もう食べなくなったとのこと。
初めてみる種類である。
背丈が大人の猫の身長ほどはある。
笹のように細い葉っぱ。

チャコちゃんちでは、よくある猫草の種を蒔いて、育てているのだそうだが、
チャコちゃんは奥歯が抜けてないために顔を横に振って草を引き抜こうとするので、
鉢がひっくり返ってしまうから陶器の重い鉢で栽培している、とのこと。
いろいろ苦労があるものだ。

*

チャコちゃんの奥さんにもチェリーの奥さんにも話した。
何を?
昨日コチカがヤモリを食べた話をです。
チャコちゃんの奥さんは、あっらー、と言い、
チェリーの奥さんは、もてあそぶのは知ってるけど食べちゃう話は初めて!と驚きの表情。
珍しい味だったんじゃない?と言った。
味……。

*

たてがみのある黄色い猫がまた来た。
長い毛をもさもささせて、ぶー、っとした顔をこちらに向けている。
ほんと、ぶー、っとした顔。

チェリーの奥さんが、カピちゃん、こっちよと言いながら、缶のキャット・フードをそばに持っていってやった。
ちょっと離れたところに住んでいた猫だが、最近結構顔を出すようになった。
チェリーの奥さんによると、
ソラちゃんのお母さんに聞いたんだけど、
一緒に暮らしていた黒い猫が交通事故で死んだので、
淋しくなって放浪するようになったらしい、とのこと。
この夏に私が拾って結局死なせてしまった子猫は毛足が長かったが
どうやらこの猫が父親らしい。
なーるほど。。

* * *

コチカは、何が気に入らないのか、ウンチの粗相をたびたび。
そういえば、あんまり遊んでやってないかも。。




 *  *  *  * 




28 ⇔ 30