2004年8月

~~~ミルク色のコチカ~~~


奮闘記 -39-



去年の今頃:マタタビでラリるレロ


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8/9 自力で初ウンチ

8月3日(火)

悲しい記念日である。
助けようとした子猫を、自分の無知から死なせてしまった日なのだ。
それから一年たち、その間にいろいろ考えた。
その話はまた今度。

* * *

夜中。
開けて寝ていた西側の窓のひさしに猫が来た。
当然コチカは挑みに行き、網戸のこちら側から、うおぉぉぉぉぉぉぉ。
当然人間は起きていき、外にいる猫を追い払う。
当然コチカは猫が行っただろう先を目指して、家の中を走り回る。
当然つかまりっこない。。
当然コチカにはフラストレーションが溜まる。
そのせいだろうか、また発作が起きた。
甲高い声を上げながら、私に噛み付いた。
私は驚いて目を覚まし、夫は怒って起きた。
決定的に噛み切るほど強くないが、結構痛い。
しかし、痛い、というと、コチカは少々我慢する。
じっと丸くなって耐えている…ように見える。
目つき顔つきが全然普段と違う。
我慢してみるものの、どうにもならない衝動があるらしく、
また甲高い声を上げながら、向かってくる。
背中を撫ぜてもだめである。
しかし優しい声で、痛いよ、とか、頭にきたのね、
などと言ってやったら、ようやく収まっていった。




 *  *  *  * 




8月4日(水)

夕べもまた発作。
しかしコチカは畳で寝ていたのであり、私は触っていない。
私が寝返りを打ったときの布団のすれる音で驚いたのか。
甲高い声と様子で目が覚めた私は、
私に噛み付こうとする前に、だめでしょ、と言ってやった。
身に覚えがないものだから、大威張りで言ってやった。
コチカはひるんだ様子で、丸くなった。
が、衝動的に立ち上がり、私に向かってくる。
だめよ!
コチカはまた戻り、丸く座った。
目つきがおかしいが、何かを考えている様子。
そのうちに長く伸び、顎の下に両手を置いて、目を閉じた。
ほっ

* * *

夕方に近い午後。
通りかかった自転車が止まる音がした。
駐車場のフェンスを叩く音がする。
なんだろう、と思っていると、音はやみ、自転車は行ってしまった。
しかしまた戻ってきて、駐車場のところで止まった。
私は立って窓に近づいた。
小柄な中学生くらいの男の子がリードを無理やり引っ張っている。
思わず私は「やめて、何するの」と大声でいった。
男の子は「いい子いい子しようと思って」と言った。
怪しんだけれど、本当にそうなのかも知れないと思い、
「そこがうちの中よりも涼しいらしいから、そうやって繋いであるの」と言ってみた。
男の子はしばらく見ていたが、
部屋の中にいて姿のよく見えない私の方をちらりと見てから、行ってしまった。
……。
こういうことがあると、人を疑ってしまう。。
嫌な気持ちにならないためにも、コチカをもっと奥に繋いでおくことにしよう。




 *  *  *  * 




8月6日(金)

夕べは何度も起こされた。
1度目はウンチとご飯ちょうだいだったが、
そのあと2度ほど起こしに来た。
寝なさい寝なさい、などと背中を軽く叩いてやると、
ことりと腰を落として横になるのだが、
ではなんで、甲高い声を出して、わざわざ起こすのか。

* * *

このところ風呂場の網戸をよくはずす。
開き口(?)はガムテープを貼リ直したばかりだが、
それでもレールから網戸が落ちているのだ。
そのせいだろうか。
コチカの頬が真っ黒な何かで汚れている。
時代劇の「切られなんとか」みたいなメイクである。




 *  *  *  * 




8月7日(土)

風呂場の網戸をはずすことを覚えたコチカは、
夕べ人間が寝る前、洗面台の横の窓辺に座って、
窓の外を見るのではなく、網戸の上部、開き口をじーっと見ていた。
いや〜な雰囲気が漂うので、ガムテープで必要な箇所を何箇所か貼り付けた。

* * *

夜中。
夫の話によると、
コチカはカーテンによじ登り、上まで行ってまた降りてきた。
最後にカーテンの布に爪が引っかかり、にゃー、っと鳴き声を上げたので、
夫が立っていって取ってやった。
コチカは夫の顔を見て、ふーっ、と思い切りため息をついたのだそうだ。
取ってやったのにっ、と夫。
そこそこ騒々しかったのに、私は全く気付かず寝入っていた。
あれからこっちは全然目が覚めちゃったのにっ、と夫。
そりはどうも知りませいで。。




 *  *  *  * 




8月8日(日)

寝室の寝る頭の方向を変えた。
いつもの違う部屋の配置にとまどうコチカ。
入ってきて困ったように、か細い声を上げていたが、
背中を撫ぜてやり、適当に声をかけると、
そのうち納得したのか、横になった。
しかしそれを何度か繰り返し、人間は寝不足に。
当分続きそうなのがこわい。




 *  *  *  * 




8月9日(月)

昨日に引き続き、寝ている左右を変わった。
いつも入り口から入ってきて私の左側に寝る。
しかし今度からは今までの入り口からは、
対角になる場所を目指してこなければならない。
今までと違い、ぐるっとふとんを回り込んでくることになる。

果たしてコチカは寝室に入ってくると、
どうしたらいいの?と困った顔で…2つの目が中央に寄った顔つきで…、
高い声を上げている。
こっちこっちとか言ってもすぐには来ない。
抱っこして私の方へ来させた。
すると良く馴染んだコチカシーツの匂いをくんくん嗅ぎ、
まあしょうがない、といった感じで横になった。
そんなことが夜中に2度。
これから先、何日続くだろうか。。

* * *

自力で初ウンチ!4個の快挙。夕方の散歩。
十字路の駐車場で、ときどきするように枯葉を掻いてウンチングスタイルになった。
しばらくしなかったが、またその気になったのかな、と見ていたら結構長く頑張る。
すると、かさっ、と音がした。
呼吸するときのわずかな動きが枯葉に伝わったのだろう、と思ったが、
でもなにかコチカの真剣さが違うので、私もますます集中して見つめた。
健常猫がするように尻尾が、かーっ、と上がっているわけではない。
でも太ももの後ろ側にかなりの緊張感がみられ、ぶるぶる震えている。
また、がさり、と音。
むむ。
やがてコチカはいつものようにおざなりにではなく、丁寧に前脚で枯葉を掻いた。
かなり暗くなっているが、そばにあった棒を使って枯葉をどけてみたら、
どけてみたら!!!
なんとウンチをしている!
4つである。
コチカは家でウンチを直腸に催し、うにゃ〜と申告するときには、
たいてい1つずつか、2つである。
だから4つということは、コチカは自分でいきんで出したのである。
コチカが自分でウンチをした!
コチカが自分でウンチをした〜〜〜〜〜!!!
生後3年目の快挙!!である。


信じがたい思いでぼんやり歩いていると、
チャコちゃんちの奥さんが出てきたので、ちょっとちょっと呼び止めて報告した。
奥さんは、へ〜、と感心してくれた。
しばらくその話で盛り上がっているところに、うちの夫が帰ってきた。
奥さんは、手に何かを盛りつけたお皿を持っている。
どこかのお宅へ持っていくところだったのだろうと思い、
たかがコチカのウンチで引き止めて、どうもすみません、とあやまったら、
ノラちゃんにあげる、夕飯のおかずの残り、とのことだった。
最近、除虫菊を栽培しているせいか、縁側にノラちゃんが来なくなったので、
と言っていた。

奥さんは、本人(コチカ)も自分でできて嬉しかったんじゃない?
と言ってくれたが、どうなんだろう。
これからも続けるだろうか。
そうなったら犬の散歩用のウンチ始末グッズを持たなければならない。
なんかわくわくするな。
うちのトイレでするようになってくれたら……と夢はつきない(爆)。




 *  *  *  * 




8月10日(火)

夕べコチカは大奮闘をしたようだ。
洗面台横の窓の網戸のガムテープ(数箇所貼ってある)をはがし、
網戸に開いた穴の修正テープもはがしてあった。
洗面台には、無数の足跡がいっぱい残っていて、
奮闘の様子が伺われる。
いったい何しようとしたんだか。




 *  *  *  * 




8月11日(水)

朝、寝こけていたコチカだが、聞き覚えのある声が、
あ〜、と聞こえるとコチカは飛び起きて行った。
アスカである。

* * *

チェリーんちの奥さんと話をした。
2週間ほど前、娘さんの住む街でお孫さんを抱っこして散歩していると、
ばあば、にゃーにゃ、というから、指差す方を見てみると、
ゴミ箱の中に子猫が捨てられていた。
すでのその上には空き缶やらが捨てられていた。
救い上げてみると3匹。
男の子がやってきて1匹は連れていった。
奥さんは2匹連れ帰った。
2匹とも目に白い幕が張ったようになっている(栄養失調のためだそうです)
夜、風呂場に置いておいたところ、
目がより悪い方が、バスタブによじ登ったのか、
浴槽に落ちてしまい、溺死してしまったのだという。
痛々しいが、しかたがないのだろう。
もう1匹は元気になって家の中にいるのだそうだ。
チェリーが母性本能を発揮して面倒を見ていたのだが、
子猫が爪を出して引っかいたりするのに辟易して、世話をやめてしまったのだそうな。
チェリーんちの奥さんもやはり動物につきまとわれる人なのだ。
マース君の飼い主ムートンさんもそうだが、
動物に好かれる、というか、動物が寄ってくる体質ってあるような気がする。

* * *

2、3日前、夜中に猫たちがやりあう声が聞こえたが、
その争いにチェリーんちの猫、ペッタンも加わっていたのだそうだ。
なんとペッタンは左太ももの筋肉を裂かれ、骨が見える状態で帰ってきた。
すぐ獣医さんに見せて、もう治りかかけていたが、
あのおとなしいペッタンが喧嘩するなんて、信じられない。
奥さんちには、人間の赤ん坊やら、ノラの赤ん坊がいて、
奥さんの手を煩わせているので、ペッタンはヤキモチのあまり、
ご機嫌斜めなのかもしれない。




 *  *  *  * 




8月12日(木)

帰省のため車中のコチカ。
最初はリアシートの背もたれの上にいたが、
そのうち降りてきて、ずっと床の上に。
フェリーではゲボゲボ。
薬を与えるのが30分前だったからか。
それとも、消化の悪い猫じゃらしの葉が出ていたので、
そのせいか。

家に着くとさっそく物置の中へ。
ご飯まで出てこなかった。

* * *

あろうことかキャット・フード自宅に忘れてきてしまった。
あちこちのスーパーで見てみたが、
不思議なことに賞味期限が迫っているものばかり。
例えば、1ヶ月先の期限だとコチカは食べない。
人間としても納得できるので、いつも1年は先のものを求める。
そんなわけで常用のご飯、ヒルズのサイエンス・ダイエットは買えず、
仕方がないので、カルカンの500gのを求める。
自然食材で、保存料不使用であり、
尿路なんとかにも対応していて、
室内猫、外猫との食事の量差を示してあるところに納得したもの。

* * *

夕食後、疲れて早々にベッドに横になってしまった私につき合い、
ベッドに飛び乗り、私の体に沿って丸くなるコチカ。
具合悪くしていると、案外コチカはこうしてくれる。
嬉しい思いやり。
でもでも。。あっついー




 *  *  *  * 




8月13日(金)

朝からずっと物置の隅。
人間からするとそんな暑いところによくいるわ、と思うのだが。
夕方には屋上で散歩。

* * *

夜中。
ウンチ〜、ご飯〜、と起こされた。
昨日は初めての味のご飯にあまり食も進まなかったが、
夜になると涼しいこともあって、おなかがすいたのだろう。
よかったよかった。




 *  *  *  * 




8月14日(土)

朝からずっと物置の隅。
人間からするとそんな暑いところによくいるわ、と思うのだが(コピペしました、はい^^\)。
夕方には屋上で散歩。
人を見上げて、にゃ〜、と何かを訴える。
何事かと顔を見ていると、ずっとその姿勢で、にゃ〜。
なんとなく抱き上げてみると、落着いた様子でまわりを見わたす。
高い位置から見たかったのだ。
フェンスの上に顔が出るので、確かにようく見える。

* * *

夜。
ダイニングキッチン兼居間でオリンピックの柔道を見る人間のそばにいたいコチカ。
でも自分の落着く場所が見つからなくて、うゃーうゃー言いながらうろうろ。
抱っこして膝に置いてやると、ほっ、とした表情で毛づくろいを始めた。
しかし、柔道を応援しているので、あともうちょい!などと体が揺れてしまう。
それが気に入らなくて、いつしか床に下り、私の方に向かって矢印形に。
どうにも指差されているみたいで落ちつかない。。

* * *

人間が寝室に上がる時刻が最も好きなコチカ。
爪研ぎ用のカーペットもあるし、窓の外が伺える脚立が用意されているし、
ある程度広く、なによりも静かで、馴染んだ人間しかいない。

さあ、行くよ、と声をかけつつ階段を上がり始めると、
嬉々として追いかけてきて、大急ぎで階段を駆け上がり、
人間を追い越そうとする。
階段はニスが塗ってあってつるつる滑るので、
コチカは3度くらい足を踏み外す。
そんなに嬉しーい?


    むむ、と頭を持ち上げ、あらぬ方向を凝視するコチカ。だ、だれかいるの??? お盆だからねえ。。




 *  *  *  * 




8月15日(日)

夜中。
うろうろベッドの下に歩きに来るコチカに、
こっちおいで、と枕元のコチカシーツを指差した。
コチカは来て、横になって寝ていたのだが、
例によって私が触った…あるいはふとんが触ったのだろう、
また発作を起こした。

私ももう大概慣れた。
ごめんごめん、痛いよ、と何度も言ってやったら、
Grrrrrrrrrrrrrr、と言いつつベッドから下り、
畳の部屋の端っこで、投げやりな態度で丸くなった。

* * *

朝、起きてトイレを済ませると、家の隅にある物置に。
夕方になると出てきて、屋上でお散歩。ご飯。
玄関やら道路に面した部屋で世情を伺い、
夕食とその片づけが終わって静かになったダイニング・リビングへやってくる。
人の足元にいたり、階段の3段目に座り、窓越しに外を眺めたり。
……とだんだんコチカの日常が定まってきたな、と思うと、
もう明日は帰らなければならない。

* * *

コチカよりもちょっと小さめの真っ白い猫…コチカと同じように尻尾が長い…が、
玄関脇の部屋の網戸から覗いているコチカにちょっかいを出しに来た。
うぎゃ〜、としゃがれ声の猫である。
コチカも、うゎ〜、と応酬する。

* * *

夜。
運動不足解消と娯楽を兼ねて、追いかけっこを何本か。
コチカはずるい。
階段を駆け上がっていくと、ベッドの下に入ってしまうのだ。
後から追いかけていき、タッチする役の私はどうすればいいのだ?




 *  *  *  * 




8月16日(月)

またもや酔い止めの薬のタイミングが早すぎた。
1時間あとのフェリーに乗るはずが、
乗船車数に余裕があり、すぐに乗れてしまったからだ。
果たしてコチカはゲボゲボ。
これでまた酔い癖が更新されたらどうしよう。。

* * *

帰りの車中では、コチカは助手席へ来る。
行きはどうしてこないのか。

バーバラ・ヘンドリックスの黒人霊歌をかけ始めたら、
コチカは何度も顔を私の顔へ擦り付け始めた。
それだけでは足らず、ドアへもこすり付ける。
そして撫ぜてやると、うっとりとした目で見上げるのである。
どうやら、黒人歌手の清らかな声が好きらしい。
特に、はずんだ感じで調子よく、
高らかに歌い上げるのなんかが、たまらなくいいらしい。
たいてい、甘えるのに顔をこすり付けている時間なんて7分くらいのものだが、
このソプラノの声が好きらしい、と気付いて何度もかけてやったら、
その間ずっと、30分ほどもそんなだった。
男性の低い声が好きではない、というか恐いらしいのは知っていたが、
好きな声があるとは、思いもよらなかった。
今度から車に乗ったら、これをかけてやろう。

* * *

首都高を降りて平道に降りると、
コチカは窓枠に手をつき体を伸び上がらせて、
もう降りる〜、うちだ〜、という声を上げる。
自宅までは半径5kmくらいかと思うが、
よくわかるものである。
その地点で下ろしたら、コチカは一人で自宅に帰ってくるのだろうか。

* * *

帰宅したら、さぞ空腹だろうと、早速ご飯を用意してやったのに、
カツオブシの匂いをちょっと嗅いだだけでぷいと横を向き、
窓という窓を走り回っている。
そして、外〜外〜散歩する〜と真剣な目で訴えるのだ。
荷物を適当に片付けて、さっそくビールで乾杯したいのに、
そういうわけにも行かず、リードをつけて、いざ、散歩。

コチカはとにかく道路の端の匂いを嗅ぎながら、
十字路の方向へどんどん進んでいく。
隣の家の門の下に鼻先をくっつけて、中の様子を伺う。
でもすぐやめて歩き始めた。
どうやらアスカもタロウもいないようだ。
十字路の駐車場にはいつものカップルがいる。
座った青年の上に女の子が仰向けになって寝そべっている。
その様子もいつもと一緒。
なんとなく視線をやるのもはばかられて、
彼らとは反対方向の道を行く。
戻ってくると、あーまた会ってしまう、という人間の思惑をよそに、
コチカはずんずんカップルの方へ行こうとする。
もう遅いから帰ろ、と抱き上げ、もがくコチカを無理やり家に連れ戻す。
結構気を使うのだけど、どうにかならないかな。。

*

家に戻って人間もやれやれ、としていると、
コチカは不満げになにか言ってくる。
最初のうちは私に体をこすり付けてきていたので、
甘えているのか、と思っていたが、
その割にはすぐ、ぷいっとどこかへ行ってしまう。
そのうち、
物見やぐらの下に座って、私の顔を見据えて何か言っていた。
珍しいことをするな、と思いながらも、何を訴えているのかわからないでいたら、
うんと後で気付いたのだが、
2階の窓フェンスのコチカの物見台を設置してなかったのだ。
出かけるのに雨戸を閉めるため、
取り外したのがそのままになっていた。。
ごめーん。。




 *  *  *  * 




8月17日(火)

寝室の位置にもコチカは慣れたようである。
今日は曇り。
天気予報によると、東京は3時から雨が降る予定である。
午後を過ぎてもコチカは起きてこない。
オリンピックも見ないで寝ている。

* * *

洗面台脇の窓の網戸をスチール製のに変えた。
猫がいるなら網戸はこれに限る。
もう登ろうが爪を研ごうがしばらくは大丈夫。




 *  *  *  * 





しどけない寝姿。。
 

8月19日(木)

夜中。
寝返りを打ったときに、ふとんががさり、と音を立てたのだと思う。
ふとんからちょっと離れた畳の上で寝ていたコチカは、
甲高い声を上げながら私に近づき、腕を噛んだ。
ふとんの音くらいでとやかく言われたくない私は、
だめよ、仕方ないでしょ、などと本気で言ってみた。
それもそうだ、と思ったかどうか。
Grr!と短く捨て台詞のように言って、下へ降りていった。

* * *

電話回線の工事の人が居間に入ってきた。
何も知らずに寝ていたコチカは、目を覚ますと知らない人がいる。
む!と起き上がり、彼に目を置いたままそろそろと居間を出ようとした。
作業を始めようとしていた男性は視界に入った白く動くものに、
はっという感じで目を向けた。
ぎょっとして一旦立ち止まったコチカは、
廊下へ出たところで私を不安そうな目で見上げた。
私は大丈夫、大丈夫と小声で言いながら、
コチカを抱き上げ、階段下の棚の上に乗せてやった。
背中がまだ不安そうではあるが、コチカはそこからしばらく動かなかった。
コチカが二階に上がって外を見ている間に、
工事の人は帰っていった。
コチカはそろそろと降りてきて、まだ恐そうに居間を覗いている。
だーれもいないってば!




 *  *  *  * 




8月21日(土)

夕食後、私の横で寝そべっていたコチカ。
テレビが大きな音を立てると、うにゃっ、と言って顔を上げた。
噛み付こうとして私の方へ向かおうとしかけたので、
私は目に力を入れてコチカを見据えてやった。
コチカは、
私が不用意に触るにはちょっと距離がある、と思ったかどうか、
私に噛み付く理由はない、と思ったのだろう。
しばらくぼーっと考えているようだったが、
ふいに立ち上がってご飯を食べにいった。




 *  *  *  * 




8月22日(日)

暑くなく、風が乾いていて心地よい。
でもまだ秋の風ではない。

塩梅よくって外にいたいコチカ。
車の下にいても、ちょろちょろ動き回るのか、
鈴の音が聞こえている。
そしてちょっとでも人間の気配を感じると、
にゃっ、と声をかけてみるのだ。

夕方の散歩のとき、
チャコちゃんちのご主人から、
顔つきがよくなってきたね、と言われた。
今まで人相悪かったのか知らん???
たぶん涼しくて過ごし易かったからだと思うけど。。




 *  *  *  * 




8月23日(月)

コチカの行動でその日の気象状態…とまではいかなくとも、
前日との気温差くらいは確認することができる。

深夜、東側の窓フェンスで外を眺めているコチカは、
人間が眠りに落ちようとする頃にようやく入ってくるのだが、
昨日は早々と入ってきて、私の腕と体の間に入り込み、
冬のお休みスタイル。

夜中にご飯のおかわりをねだりに来て、その後もふとんに寝ていた。
朝、起きてみたら畳の上に寝ていたが、
人間が起き出してしばらくしたら、ふとんに戻っていた。
やはりもう夏も終わりらしい。

夕べもまた噛み付いてきた。
例によって私が触ってしまったらしいが、以前のように猛々しくない。
だめよ、私のせいじゃないよ、とそうっと言ってやったら、
そうなのかも…と思っているような様子で後ずさりし、
そのまま寝室を出て下へ降りていった。

それにしても、もっと寒くなったら、
コチカの寝るスペースを確保しないといけないな。
夜通しコチカを警戒して寝るわけにもいかないし。
でも脇の下に丸くなるのだったら意味ないか。。




 *  *  *  * 




8月24日(火)

お隣居候猫タロウが門の前に座っていたので、
近づいていって撫ぜてやったら、
ゴロンと横になり、心地よさげになにやら言いながら、
体をコンクリートに押し付け、くねらせた。
思いの外人間に慣れているのだ。
うにゃうにゃ言っている口には唾液が溜まっている。
タロウも歯槽膿漏なのかな。
毛並みもきれいじゃないし。
こうやって見ると、なかなか大きな猫である。




 *  *  *  * 




8月25日(水)

コチカはすっかり寝室の位置に慣れた。
当たり前に部屋を回りこんで私の隣に来る。
コチカがこちらへせり出してくると、
私はコチカの体をそっと抱き上げて位置をずらす。
こういうときにはコチカは知っているのかどうかわからないが、
全然動じずに寝ている。
どうやらふいに体に触られたり、耳に障る騒音が深い衝撃となるらしい。
ふむ。




 *  *  *  * 




8月26日(木)

朝。
わーコチカ出てっちゃった!と声がした。
居間の網戸を開けっ放しにしてしまっていたのだ。
出勤前に汗をかきたくない夫は、連れに行ってー、と私に言う。
お弁当用に炒飯を作るのに、
フライパンを火にかけ、あれしてこれして…とやっている私は、
あわてふためいて外に出た。
コチカは道路に鼻をくっつけて臭いを嗅いでいる。
ほとんど初めてくらいに窓から出たので、
恐る恐ると、いうところなのだろう。
私が近づいても、家に連れ戻されるかも、という切迫した様子もない。
しかし家に連れ戻して神経を逆撫ですることもないので、
窓から首輪とリードを受け取って、駐車場に繋いでおいた。

* * *

もう夜になるとかなり涼しい。
コチカの食欲も戻ってきた。
人間が遅く帰宅したのでコチカは空腹できりきり舞いしていたようだ。
キャット・フードにカツオブシをかけなくてもパクついていた。




 *  *  *  * 




8月27日(金)

うちの駐車場は居間の窓の向こうにある。
コチカのリードは狭い駐車場に置いた車のドアノブに結わえてあるので、
コチカは窓にすぐ下にいることになる。

私がそろそろ出かけようとした頃、
コチカが窓枠の下を引っかいた。
窓を開けると、当たり前のように上がってきたので、
リードをはずすと、一言、にゃー、と言った。
ウンチである。
外にいてもどこにいても、ウンチを催すと、ちゃんと行動を起こすのである。
偉い猫だな、うちのコチカは(爆)。

*

感激しつつトイレを片付け、仕事を終わらせようとテーブルの前へ座ると、
コチカがすでにその場所に座っていて、
頭を平べったくして頬を擦り付けてくる。
出かけないといけないのに、と思うのだけど、ついよしよしモードに入ってしまう。
いつになくべたべたと甘えるコチカ。
気候がいいからだろう。
暑くなく寒くもなく、静かでなんの心配もなく呼吸をしていればよい。
そしてなんとなく飼い主が目の前にいるので、
つい体を擦り付けていい按配を助長させたくなる気持ち、よーくわかる。




 *  *  *  * 




8月29日(日)

台風が近づいていて、薄ら寒い。
コチカは人間が寝室に入るや、早々とやってきて、
私の脇の下でもみもみをしばらくやってから、
腕と胴体の中に入り込み、丸くなった。

夜中。
また発作が起きた。
しかし私は夢うつつでだめよ、とかなんとか言って、
牽制して、もう慣れたもの。
朝になったらまた私の腕と胴体の間で寝ていた。
コチカ、そうやって寝るのなら文句言うのやめなさい。

* * *

日中も寒い。
冬用のコチカ座布団を出してやったのだが、
くんくん、と匂いを嗅いでみるものの、
テーブルに座る私の膝の上で無理やり丸くなるコチカ。
暖かくていいのだけど、狭いでしょ。




 *  *  *  * 




8月30日(月)

台風の影響で東京もぼったりと重い空気。
ひげ雨が降ったりやんだりで道路が濡れている。
こういう状態で雨が降っている、と言ってもコチカは納得しない。
しかたなく抱っこして散歩。

アスカとタロウに会う。
当然降りたいコチカを下ろす
尻尾をぎゅっと持たれての逢瀬。

十字路まではまた抱っこ。
駐車場の隅の猫じゃらしの葉っぱは食べさせてあげたい。
コチカを下ろしてまた尻尾をぎゅっと持つ。
私はお尻を突き出した格好で待っている。
誰も来ませんように、と願っていたのだが、
ソラちゃんのお母さんがやってきて、
あっらー、と言われてしまった。




 *  *  *  * 




8月31日(火)

台風16号の風がすごくて夜中は寝られなかった。
お陰でコチカも一緒になって起きてきた。

朝になったら、
向かいのお宅のガレージのプラスチック製のトタン屋根の釘が外れてバクバクしている。
それを直しているのを、何の音やら、
と思案気に耳をそばだてているのが、人間の大人みたいでおかしい。
雨戸を開けると、わざわざ窓に見に行って、はーん、という顔をしてこっちを見た。

* * *

買い物に行く途中にトラ猫に会った。
まん丸の目で私を見据えている。
そのまましゃくりあげ、かなり長い間続くのでしゃっくりなのかと思ったら、
何回か目に嘔吐した。
目は私に据えたままである。
2回ほど吐いたのに、その間もずっと。
よほどの不審人物に見えたのだろうか。
射るような視線に、私はまさしく射られて的に突き刺されたようになって、
まったく身動きできなかった。
大したものである。

* * *

夕のお散歩。
十字路の駐車場にいたら、あ〜、と声。
頭の上に!マークが飛び出たコチカは、声の方へかけよろうとする。
アスカが駐車場の向かいのお宅の塀の上にいて、
声をかけているのである。
近づくと逃げるくせに、声はかけるのである。
アスカもコチカに興味があるのかな。
なら、逃げないでかまってやってよ!

38 ⇔ 40