2005年7月その1

~~~ミルク色のコチカ~~~
+豆台風がやって来た!

奮闘記 -50-

その1(7月1-10日)
→その2


何この生き物は?

* ミルク色のコチカ・トップへ *


7/3アメリカン・ショートヘア・ブレンドの子猫を連れ帰った
ほとんどが子猫の記述。コチカの様子を書いたところはいつも通りピンク。
7/8ウンチをしない→獣医さんに相談 7/9トイレの縁越えの見物 

7月1日(金)

嘔吐。
草を食べ過ぎたのと、
消化の悪い白緑のストライプの葉を食べたからである。

居間で寝そべっていたら、いきなりピョンと姿勢を正して、
しゃくりあげた。
あーびっくりした。

* * *

午後。
来客があったので、エアコンをつけていたので寒くなったのか、
いつも夫が座る側にいる私のそばにきて、膝によじ登ってきた。

でも、その人が前回来たときにもそうだったのだが、
いつもの私の側に座っている、その来客のところへ、
とりあえず行ってみるのだ。
でも、座っているのは私ではない。
そこで初めて、あれ?と思い、私の顔を見て、みゃ〜、という。
その手続きの取り方が妙というか、不自由というか。。

* * *

夕方は、出かける予定でいて、もう用意をして出かける寸前だったというのに、
ひどい疲れを感じて、ちょっと座ったらあろうことか寝入ってしまった。
いつもなら散歩に出かける時間である。
コチカはどうしていたのか、全然私を起こさなかった。
あるいは、私が動く気配がないので、自分も寝ていたのか。




 *  *  *  * 


7月2日(土)

夕方の散歩。
暑くて食が細ったのと、毛が抜けたのとで、
体全体がほっそりしたコチカ。
首輪がゆるゆるになってきて大丈夫かと思っていたのだが、
今日はとうとう、穴から留め具がとれて、首輪がはずれたのだそうだ。
リードごとコチカの首からするりと落ちたことに、夫が焦ったそうだが、
コチカは意に介さず、事なきを得たのだそうだ。

* * *

夕食のとき、
よしよしして〜、と弱々しい声で訴えるコチカに、
私が歌を歌ってやると、夫も唱和した。
唱和と言っても、かわいかちゃちゃちゃちゃちゃ……という、
ちゃちゃちゃちゃちゃ…の部分を夫が一緒に声を合わせるだけだけど、
最近はいつもこのパターンに落ち着いている。

歌いだすと、コチカは体を私の腕にこすりつけ、
歌い終わると、バタンと横になった。

というのも、歌い終わると、ゴロ〜ン、というからで、
よしよししながら歌ったもらったら、横になる、というのが、
夕食時のよしよしパターンなのである。




 *  *  *  * 


7月3日(日)

いつものように樹林公園にウォーキングに行った際、アメリカン・ショートヘア・ブレンドの子猫を連れて帰るハメになった。

2匹のミニチュアダックスを連れた若い夫婦で、カラスに弄ばれているところをご主人が助けたものの、奥さんは猫アレルギーで、咳とくしゃみが出てしまうのだそうで、でも置いておくには小さすぎるし、カラスにやられたらいけないし、昨日は寒かったしまた雨が降るだろうし、捨て猫かと思って箱などを探してみたけれどみたけれど近くにはなくて、親らしい猫もいないし公園の管理人さんに言ったって処理施設に送られるだけだろうし。。

と困り果てて手にささげ持つようにして(体に寄せるとアレルギーがでるらしい)持って歩いているところへ、私があっらー生後何日くらいですか^o^/と声をかけてしまった、のが運の尽き。。誰かお知り合いに猫好きの方は?とお互いに言ってみるのだけど、その奥さんはだーれも、と言うし、うちの近所にはチェリーの奥さんという人がいて、でもいるにはいるけど私が持っていったら迷惑だろうし、とか言ったものの、アレルギーもなく、近所にそういう人がいる、という話をしてしまった私の負け、というのも変だけれど、じゃあまあ、と私が連れて帰ることになってしまった。

チェリーの奥さんにもちろん相談した。
いちおういいわよ、と言ってはくれた。
でもな。。
自分で拾ったわけでもないので、結構な重荷になるはず。。

拾った当初のコチカより小さいし、よくわからないながらも子猫用のミルクをいくつか買って、とりあえず家に帰り、子猫の飼育について書いてあるHPをいろいろ探して、試行錯誤をしてミルクをやったり排泄させたりした。

ティッシュを濡らしてお尻を撫ぜてみたら、黄色いおしっこを大量にした。
子猫のおしっこは無色透明で無臭なはずなので、黄色いということは、水分不足なので、ミルクにお水を混ぜて与える、ということ。
ふむ、というのでやってみた。
以来、2時間おきくらいに、排泄を試み、ミルクを与え、体を撫ぜ、また排泄を試み、と繰り返すこと就寝するまでに3回くらい。
あとは、切った毛布の中に包んでキャリーの中に入れておけば、おとなしく寝ている。

歯はまだ前歯がようやく生えている程度。
私の手を持っていくと、暖かいせいか親猫を思い出すらしく、歯を立ててみたりする。するとそこそこ痛い。
でも欠伸をしたときに奥を見てみると、なーんにも生えていないのだ。

コチカに見せてみたら、何この生き物は?とおっかなびっくりで、匂いを嗅いだりしている。
子猫がコチカの方に寄っていくと、うわっとばかり飛び上がって逃げる。
私が子猫の世話をしている様子を、台所と居間の仕切りのカーテンの隙間から、そーっと見ている。
そんなにだめ?

チェリーの奥さんが、アメショーと日本猫は愛称が悪いみたい、と言っていたけれど、
本当にそうなのかなあ。
ペッタンもアスカのことは嫌いらしいのである。
コチカはアスカを好きだけどな。。

コチカは、
自分のテリトリーの中に初めてくらいにいる生体に驚いている、という感じ。
自分と同じ猫だというのはわかるけれど、どうしていいかわからない、というように見える。

ずっと昔、まだ若いシャム猫ブレンドの兄弟がいて、私が高校から子猫を2匹拾って帰ったとき…
その子猫たちは今日うちに来た子猫よりさらに小さかった!…
雌猫の方が世話をしていた。
子猫たちはメスシャム猫の胸にすがり、ヨダレでべとべとにしていたが、
嫌な顔ひとつせずに、させていた。
結局、その子猫たちは、うまくミルクを飲ませてやれなくて、死なせてしまったけど。。

* * *

それにしても、不憫。
人間の手のやわらかい部分を、小さな手を押して押して…もみもみというよりは懸命に押している…母親をまさぐっているつもりなのだろう。
母親の舌をまねて、目から耳にかけて撫ぜてやったり、体を指先で撫ぜてやると、うっとりしたような様子を見せるが、やはり違うだろうし。。

アメショーの特徴なのだろうけれど、平らな顔だち。
黒い肉球。
後ろ足を少々開げて歩く…アスカとそっくり。
結構ノミがいるので困ってしまう。
昨日から5匹くらいやっつけた。

コチカにももうついていて、おしっこさせるときに腰のあたりにノミの生活の痕跡を見つけた。
なんとかせねば。。




 *  *  *  * 


7月4日(月)

朝。
キャリーの中に入れて、一晩中放っておいたのだけど、
子猫はよく寝たらしく、朝も元気だったので、ほっ。。とした。
でも私は少々疲れた。

すぐにチェリーの奥さんちに連れて行こうと思ったけれど、どしゃぶりの雨なのでまた後にしよう。

いったいそれにしても、昨日のあの時点で、他に方法はあったのだろうか。
しばらく一緒に歩いて、誰か猫を好きそうな人を探す、という手もあったけれど、
私たち夫婦は6km歩き(走り)終わったばかりで、汗だくで、しかも昨日は涼しかったので、
すでに寒さを覚え始めていて、なるべく早く車に戻り、着替えたかった。
でも、こういうことは拾った人の運命なのだから、と放り出すこともできなかった。
その人が猫アレルギーでなかったら、と任せたと思うが、
アレルギーのために十分なケアもできないまま手放すことになって子猫にとっては辛い運命をたどることになったら、
と一瞬のうちに思いがよぎって、では私が、ということになったのだと思う。

ネットの里親探しのページ用に、何枚か写真を撮る。

もしもチェリーんちの奥さんが預かってくださる、ということになって、
ずっと奥さんちにいることになったら、前のトラちゃんはもう死んでしまっているのだ、
という気がする。
でも逆に、そうでなければ、トラちゃんはどこかで生きているのだ、と思う。

私は、一族がある一定期間に関わる魂の数というのは、決まっていると思っている。
誰か、あるいは動物が死ぬと、誰かが生まれるか、動物が生まれるか、来る。
これを私は一族における魂の出入り、と呼んでいるが、
もちろん気づかないでいるのが普通だと思う。
だいたい、そんなバカな、というような類の話だし。

チェリーんちでは、トラちゃんの兄弟も一緒に来た。
でも冬の夜も暖かいお風呂場に入れられていたら、
一匹はお湯にはまってしまい、死んでしまった。

で、トラちゃんも交通事故に遭い、驚いてどこかへ行ってしまったきり、
帰ってこなくなった。
肉体がやられて生きられなかったか、きれいな猫なので人に保護されたか。

生きて、トラちゃんの魂がまだチェリーんちの奥さんを呼び続けているのなら、
チェリーんちに新しい生命体はこないのではないか、と思うのだ。
あるいは全然違って、まったく別の魂が来る予定なので、空けてあるのか。

さあ、どういうことになっているか。
夕方には雨上がるかな。。


* * *

雨降りなので、遅くに起きてきたコチカは、朝から複雑な顔をしている。
やはり小さな珍客に、落ち着かないものがあるのだろう。

子猫が寝ているキャリーをときどき覗いては、そーっと居間を出て行く。
寒いので、低い藤の椅子を出して座っている私に、にゃーん!と言うので、
よしよししてやってコチカの歌を歌い、膝に乗せてやったら、
こんなところにいられるか!といった様子で、ぴょんと飛び降りてしまった。
子猫の匂いがするのだろうな。

私はなるべく子猫のくるまっている毛布ごと膝に乗せるし、
子猫に触った後は、手を洗ってからコチカに接するようにしているのだが、
そんな程度じゃだめよね。

それでもコチカは横に座っていて、ときどき思い出したように、にゃん!と言う。
私が振り返ると、子猫が寝ているキャリーを見るのだ。
あれを追い出せ、と言っているのか、どうしているのか、と聞いているのか。
寝てるよ、と言ってみたら、キャリーのそばに行ってまだ匂いを嗅ぎ、
台所に出ていった。

昨日も夫と話し合ったのだが、
うちは借家だからコチカ1匹しか飼えないけれど、もしも飼える条件にあったら、どうするか。
子猫は健常猫なので、去勢をしたとしても、外に出すだろう。
そうしたらコチカが怒るに決まっている。
としたら、やっぱり飼えない、という結論になった。
他にも実家に帰る、という現実的な年中行事があるし。


* * *

チェリーんちはやはりだめだった。
トラちゃんはどこかで生きている!と私は決めた。

* * *

夜。
夫はすっかり子猫にぞっこん、という感じ。
今朝方、5時ごろ寒いのではないだろうか、と思い、
オイルヒーターをつけてみているところを、私が阻止した。
冬の毛布に包まっているので、大丈夫だと思っているからだ。
でも夫は子猫を触ってみて、いや、冷たい、という。
おなかの下の毛布は暖かくなっているのに。
それから夫は心配で眠れなかったのだそうだ。

* * *

午後6時にミルクをやって10時過ぎまで寝ていた子猫は、
ことさらおなかをすかせていたようで、
小さな哺乳瓶を近づけるとむしゃぶりついてきた。
夫が夢中になってミルクをやっている。

夫が500mlのペットボトルにお湯を入れ、
湯たんぽを作って入れてやったせいか、
子猫はさらに元気になったようだ。
やっぱり少々寒かったのかなあ。

イミテーションの硬い乳首にも慣れてきたようで、自分でなんとか飲もうとする。
ちょこっと飲んでは、膝の上をうろりとしてみて、
またちょこっと飲む、ということを数回繰り返す。

それから子猫は畳に降りてみた。
まだ足元がおぼつかない。
耳とかが痒くて頭を振ったって、ゆらりとして体勢を立て直す。

ぽったり丸っこい体に比べると、細い腕と脚。
細い腕と脚にしては、手と足が大きい。
後ろ足が開いていて、ほんと、アスカによく似ている。

でもこんな小さいのに、後ろ足で器用に耳の後ろなぞを掻く。
当たり前なのだろうけれど、実際に見ると感嘆してしまう。


ときどきコチカが寄ってきて、くんくんと匂いを嗅ぎ、
すーっといなくなる。
気になる匂いを嗅いだときにする、
口を半開きにした表情をすることもある。

何をしていてもかわいくて、さかんにカメラを構えるが、
黒いので、ピンボケになりやすい。

コチカは白く発光するみたいなところがあって苦労したが、
それに慣れた腕(?)には、黒い猫は難しい。

子猫の体にはノミがいっぱいいる。
そして、ノミの生活史である黒い粉と一緒に、
白い粉もいっぱい落ちている。
これ何?
もしもこれがノミの卵だったら、えらいことである。

爪なんか研がなくても、子猫の爪ってはがれるのね。
小さな小さなサックみたいなのが、するりと剥がれ落ちたのである。


おねむ。。


 *  *  *  * 


7月5日(火)

コチカ、嘔吐。
私がいない間に居間の物見やぐらの上で吐いていた。
今朝は草をいっぱい食べたのだった。
それと一緒に、2cmほどの長さの毛玉。

私が片付けていると、コチカが坂を上ってきた。
気分悪かったの?と言ってみると小さく低く、にゃー、と言った。

* * *

動物病院に行ってきた。
ご近所のチャコちゃんが行っている病院である。

親子でやっている病院で、いい感じ。
子猫を見せると、開口一番こりゃまたちっちゃいね〜、とお父さんが言った。
誕生日決めましょう、どのくらい、ん?とご子息に聞き、子息が子猫を持ち上げ、
歯の様子などを見て、3週間たってるかってとこだね、と言った。
そしてお父さんが、じゃあ6月15日にしよう!と言い、それで決定した。

白血病やエイズの検査をしに行ったのだが、
ミルクを飲んでいるようじゃ、話にならないのだそうだ。

10日以内に離乳食を始め子供食になったら、
虫下しを飲ませにきなさい、ということだった。

それから爪をぱんぱん切った。
私はコチカの爪も切らないできたので、
へ?と驚いていると、切らないと手を引っかかれて痛いでしょ、と言った。
だって、ちゃんとあるべき爪を切ったりしたら、調子狂うでしょ?

ノミがそうとうにいるので、お風呂につけてとらないと大変なことになるよ。
ちゃんと乾かさないといけないけれど、毛が寝ているときに、ピンセットで失神状態のノミを取って、水に浸けるといいです。
とていねいにノミ撲滅の手順を教えてくれた。

自分で飼う気がないのなら、検査とかワクチンとかにお金かけることもないでしょう。
まだこんなに小さいのだから。
ふむ。
昔ながらの考えがまだここでは通るのだ。
はあ、と私は応えた。。


* * *

あー、また毛布におしっこをしている。
たくさん毛布があって、よかったよかった。

ときどき、小さな顔を挙げ、私としっかと視線を合わせる。
でも、次の瞬間、ふっと顔を背ける。
きっと期待する人がいるのだろうな。
親猫だろうか。

コチカもうちに来たばかりの頃は、そんなだった。
らんとした目で私を見、次に失望したように目の色が褪せていき、うつろな目を宙に泳がせたのだった。
そんなことが昨日のことのように思い出せされてきて、ふと悲しくなる。

子猫が見ていた懐かしい風景、人、親猫というのは子猫の記憶の中にしかなく、
私たち人間にはわかりようもない。

いったいどういう生活をしていて、どうしてカラスに弄ばれるハメになったのか。

*

ミルクをお皿に入れて顔を持っていってやった。
しばらく考えるような様子をしてから、偶然つんのめり、鼻先がミルクの中にぼちゃっとついた。
口の周りについたミルクをぺちゃぺちゃやり、ああ、これはミルクだ、と思ったのだろう。
積極的にミルクに顔を近づけ、舌で上手に舐めた。
結構飲んだ。
よしよし。

獣医さんに言われた通り、お風呂に入れた。
ちょうど空にして中を洗ったばかりの小さめのバケツ型のゴミ箱に、
ノミ取り用のシャンプーを垂らし、お湯を子猫の頭より下の身長分、入れた。

子猫を連れてきて、いきなり浸けた。
驚いて鳴き声を上げる子猫。
10匹くらいのノミが浮いてきた。
さっさと洗い、さっさとすすいで、はい、出来上がり。

獣医さんに言われた通り、毛が濡れている間に、動きの鈍くなったノミを取る。
10匹くらいいた!
いったい、これだけノミがいるということは、外にいたということか。

用意してあった水を入れた器の中のノミを覗くと、なんと、生きている!
中には泳いでいるものもいる。
ノミって生命力が強いのね。
試しに放っておいたら、1時間立っても、まだ生きているのがいた。
器を這い上がっているのもいる!
恐るべし。ノミの意地よ。


* * *

夕食時。
子猫はミューミュー鳴きながら、畳の上をうろうろしている。
結構果敢に歩き回っている。
昨日と違い、足取りがしっかりしているのでびっくり。

夫は帰宅するなり、着替えなぞしながらも、子猫の世話に取り掛かる。
注意していないと踏んづけそうで恐い。

子猫は台所によろよろ来て、コチカのご飯を見つけ、くんくんと匂いを嗅ぐや、
これだ!とばかりにご飯に飛びつき、顔をもぐりこませるようにして、食べようとした。
コチカのご飯の器に巨大な黒い蜘蛛が張り付いているかのような。。
小さな口を必死に開けて一粒一粒に噛み付いている。
到底歯が立たないのだけど。
階段下でコチカは、唖然呆然とした表情で見ている。


夫が、コチカがかわいそうじゃん、というので、
子猫が諦めてどいた後、カツオブシを乗せ、どうぞといったら、コチカは迷わず食べた。

私は子猫がそんなに食べる意思があるのなら、と思い、
コチカのご飯を3粒くらい砕き、ミルクの中に浸けておいてやった。

人間の食事が始まっても、夫は子猫を胡坐をかいた股の間に置き、様子を見ている。
おなかが空くと、ミューミュー鳴き出すので、ミルクを飲ませる。
ちょっと飲むと、満足してすーっと静かになる。
眠りもせず、ぼーっとしているのだ。
夫は左手で子猫を支えながら、ご飯を食べている。
ときどきうごめく子猫。
あ、僕のキンタマもみもみしてる。
爪がプシュって突き刺さったらどうしよう…だって。バーカ(笑)。

今度は私の番。
正座をした股の間に、子猫は挟まるようにして収まっている。
きっと暖かくて按配いいのだろう。
でも、例によっておなかがすくと、甲高い声でミューミュー鳴き出す。


横に寝そべっているコチカが、うぁーん、とうるさそうな声をあげ、横目でじろりとこちらを見る。
しょうがないねえ、赤ちゃんが鳴いてるんだから、と首筋を撫ぜてやる。

何度もちょこっとずつミルクを飲んでいたが、
さきほどミルクに浸しておいて、もうどろどろになった固形のキャット・フードを手掬って口に持っていったら、
3粒分、全部食べた。
すご〜い。
だったらもうこれでいけるかな。
明日はウンチ出るかな。

またもうろうろしながらミューミュー鳴いている子猫。
なんと、もう狩猟の練習もしている。
キャリーのベルトを獲物に見立てて、
体を丸く縮めて、それから、すわっ、とばかりに飛びつこうとする。
そのどれもがよろよろしているのだが。。
大したもの。。


でもそうこうしているうちに、動きが完全によたってきた。
もういい加減に眠いはずである。
腕に乗せた状態で抱っこし、ウンチをさせようとティッシュでお尻をこしょこしょやっている間に、
子猫はさらに朦朧としてきたようだ。

ペットボトルの湯たんぽを置いたキャリーの中に、新しく切った毛布を敷き、
子猫をそうっと置くと、ひっくり返ったままの格好で、動かなくなった。
目をうつろに開いたまま。怖〜
でもおなかはすーすー、と上下している。
かわいいもの。


やっと静かになった空気の中で、コチカの時間が戻ってきた。
洗い物をしていた私は、階段下で所在なさげにしていたコチカと目を合わせた。
するとコチカの耳がすーっと後ろへ下がり、背中がきゅーっとアーチ型に持ち上がった。
戦闘開始である。
私が一歩を踏み出すと、コチカもだだっとダッシュ。
久しぶりに追いかけっこを5,6本やった。




 *  *  *  * 


7月6日(水) 新月

朝起きると、先に夫に持ってこられたキャリーが居間にあり、
もうミューミュー鳴いている。
ああ、また鳴いている、という感じ。

子猫とはいえ、必死さが伝わってくるので、気分が焦らされる。
大したもの。

夫は時間がない、とかいいながら、暖めたミルクを小皿に入れ、
子猫を顔を近づけて見ている。
だめだね、鼻先をミルクの中につけちゃってるよ、と夫。
寝起きなので、昨日のことは忘れているのだろうか。
日常生活の基本が身に着いていない状態って面白い。

夫がようやく家を出てから、ゆっくりご飯タイムにした。
例によってミューミュー鳴いて、ちょこっとミルクを飲んでは放心し、
ミューミュー鳴いて、ちょこっとミルクを飲んでは放心し。
砕いてミルクに浸けておいた離乳食も、手で拾って食べさせた。
自分では食べようとしなかった。
母親が恋しいのだろう。

グラスにお湯を入れ、その中に哺乳瓶を入れて暖めているのだが、
哺乳瓶を取り出すときに、グラスの縁に当たって、音が立つ。
子猫はその音を覚えたようだ。
カランカランとグラスの音が鳴ると、
ミューミュー鳴いていても、それ!それちょうだい、と言わんばかりに、身体を乗り出す。
気が確かで、お利口な猫だこと。
コチカのときも、そんな印象を持った。
楽しい猫になりそうだ。

排泄促し作業を試みたが、まだだめ。
キャリーの中の毛布を替える。


* * *

午後4時すぎ。
朝っぱらから子猫の世話+こんなことを書いて油を売っているので、自分の仕事にしわ寄せが来ている。
うわーとばかりに片付けていたら、お昼を忘れ、もうこんな時間。

大変!子猫のご飯だ!!!
居間に戻ってキャリーを覗き込むと、目を開けて上を見ている。
起きてた?と声をかけると、ミューミュー声を上げた。
見ていたコチカはうんざりした顔を私に向けた。

朝と同じような騒動をして、ミルクにどろどろご飯をやる。
お尻をティッシュでこしょこしょしても、出ない。
困ったな。

もうおなかもくちくなっただろうから寝かせようと、毛布にくるんでやっても全然寝ない。
ぱっちり目を開いて、細い手足を動かし必死に畳の上を歩き回る。
ときどき座って後足で耳なんか掻く。
首をぐっと曲げて肩あたりをぺろぺろ舐めようとして、バランスを崩し、ころりとひっくり返る。
かわいくておかしくて噴出す私を、コチカは無表情で見ている。

もう畳で爪を研ぐ仕草をする。
仕草だけではなくて、実際研げでいる。。
すぐやめさせて、柱に巻きつけた切り売り絨毯に張り付かせる。

いったいいくつの事柄が本能としてインプットされて世に出されるのだろう。

ティッシュでお尻を撫ぜてみる。
排泄せず。

畳におろしてやると、子猫はキャリーの後ろに行きたがった。
ちょうど襖の敷居があるところなので、冷たいだろうと思い、
何度も手の上に乗せてみたり、毛布に乗せてみるのだが、すぐ同じところに行ってしまう。

暗い隅っこの方が落ち着くのかな、と思って、しばらく放っておいた。
でもいやに静かなので、そうっと見てみると、なんとオシッコをしている!

おっと、と抱き上げると金色の液体が噴水のようにしゅーっと出ているではないか。
きゃ〜〜〜〜〜チャチャ、助けて〜!と叫んだけど、コチカは目をまん丸にして見てるだけ。
食事をさせるのに使った大量のティッシュがテーブルに山積みにしてあったので、その上に子猫を置いた。
たっくさんした。
こんなに溜めていたのなら、さぞかし苦しかったろうと思うが、
今朝、毛布にしていた以来なのだから、こんなものなのだろう。
それにしても、腎臓もちゃんと機能しているのね。よかったよかった。

そういうことなら、とさっそくトイレを作ってやった。
以前にコチカが使っていた黒いトレイに猫砂を入れ、子猫のおしっこを拭いたティッシュを入れる。
ここがトイレよ、と教えると、どれどれと入っていって、あろうことか、猫砂を口に含んだ。
こらいかん。
猫砂はペットシートに替えた。

大量におしっこを出したので、またおなかが空いたらしい。
残っていたミルクとドロドロご飯を与えた。

またちょこっとおしっこが出ている。
あとはウンチだ。

さすがにもう眠いだろう、と両手に抱いて暖めると、手の先などをぺろぺろし始めたので、
毛布に包んでキャリーに入れた。
子猫は静かにしている。やれやれ。

それにしても、子猫と言っているのも不自由。
名前くらいつけた方がいいのかな。


* * *

夕方のコチカの散歩。
ストレスを溜めているはずなので、ちょっと長め。
こっちはやることが決まっているので、楽〜

* * *

居間に子猫のキャリーを置いておくと、
静かに行動しないといけない気分になって物事が行き詰りそうなので、別の部屋においている。

キャリーが置いてあった場所は、なにか光でも発しているのだろうか。
コチカは、さもそこにキャリーが置いてあるかのような距離に座って、じっと見ている。

そして私と目が合うと、うぉ〜うわぁ〜、と何か言い、私を見上げながら足元にまとわりつく。
低く、かすれた声。
こんな声は初めて聞いた。
ちょっと意外。
何を言っているのだろう。

あの子猫、ずっといるの?とか?

* * *

夫が帰宅するころに、子猫のご飯タイム。

コチカのご飯のお皿からキャット・フードを3粒ほど取って、
子猫のドロドロご飯を作ろうとしたら、
見ていたコチカがいや〜な顔をしたので、
冷蔵庫からキャット・フードを出して、3粒、コチカのお皿にチャリンと入れておいた。
やっぱり別々にしないとね。

ご飯の前におしっこ。
子猫は、居間の隅っこへ行って、くんくんと匂いを嗅ぐと、動かなくなった。
おしっこをしていたのである。
おっと、と体を持ち上げると、おしっこは止まった。
壁の下の隅っこの、壁土が三角にはがれているところを、くんくんしたのだ。
ならば、とそこにトイレトレイを置いた。
そこで、動きのなくなることしばし。
上手にできた。


子猫は、夫の声を聞くと、台所まで出て行って、
夫の靴下を履いた足によじ登ろうとする。
昨日、夫の股の間でよほど気持ちよかったのだろう。
それを覚えているところに感心。
夫の方が私よりも体温が高いので絶対好きなはず。
コチカもそうだった。


それからご飯。
私が世話をする横でコチカがじーっと見ている。
最初は正座して見ていたのが、
だんだん横座りになって、ただただ暢気に、でも興味津々で見ている。
片肘ついて煙草をふかしてるオヤジみたいだよ、コチカ。

ねえ、コチカも相手してやってね、と言う夫。
してるよ〜

* * *

子猫の残したドロドロご飯をコチカのお皿に入れておいたら、
コチカは気を悪くしたのか、食べなかった。
だって昨日、子猫のお皿の残り、全部食べちゃったじゃない!




 *  *  *  * 


7月7日(木)

朝。
目覚めの一番から、ミューミューに焦らされる。
甲高く、必死の声。
こんなに小さいのにすごい迫力である。

誰のご飯を一番にすべきか、迷いながらシンクに立つ。
コーヒーの用意をしてみたり、ミルクを温めるためのお湯を出してみたり。

結局人間のコーヒーを用意している間に、夫がおしっこをさせた。
ティッシュをお湯で濡らそうとした夫に、乾いたままで大丈夫だし、
居間にしつらえたトイレでさせる旨を伝えた。

まったくその通りすると、わ、上手にするのね〜、と驚く夫。
私もまた驚く。
健常猫ってこんななの?


コチカのときでかなり手間取っているので、なにもかもが新鮮。
と同時に、これが本能に誘われてできていることなら、
コチカは当たり前にしようと思うことができず、
さぞかしもどかしい思いをしたことだろう、と改めて思う。

テーブルでコーヒーを飲んでいる間に、温まったミルクを飲ませた。
哺乳瓶を口元に持っていくと、ミュワ〜ぅにぁ〜、とむしゃぶりついた。
両手で抱きかかえながら、乳首を固定するねじ部分までかぶりつく。
ところでこの哺乳瓶っていったい何?
子猫用にしても小さいのでは?
もしかして人形の?
なんでそんなものがうちに?


* * *

2時間たったら、またミューミュー。
はいはい、とご飯。
おしっこ。
おしっこしながら、ミュァーミュァーと声を上げている。
もしかしてウンチが出そうなのだけど硬いのかな。

もうそろそろお眠かな、と思うのに、なかなか寝そうにない。
キャリーの中に入れてやってもすぐに出てきてしまう。

私の腕によじ登ってきて、顔を撫ぜてやると、指先を吸う。
まだ食べたりないらしいので、ドロドロキャット・フードをやったら、
いくらでも食べる。7粒分くらい食べた。
これじゃ鳴きやまないはず。
お皿に顔を近づけてやっても、キャット・フードの周囲に浮いている水分だけちゅうちゅう吸うだけで、
まだ自分では食べられない。

しかたなく指先で掬って食べさせる。
差し出される指を吸いながら食べるので、キャット・フードが押しやられて、
人差し指、中指、薬指のあちこちにくっつくし、
そちらに気をとられているとドロドロご飯の中に手を突っ込むし。

ようやく食べ終えて、汚れたその辺を拭き取り、手足もきれいにして、
おなかの辺りに抱っこしたら、口のまわりのくっついていたドロドロご飯が、べっちゃっと私のTシャツについた。
あーあ、もう。。


* * *

出かけていて、夕方になる前に帰宅した私は、ひどく疲れていた。
どろりと眠くて、もうすぐにでも寝たい。
でも、雨が降りそうなので、コチカの散歩に行かなければ。

それが終わったら、再び、お風呂。
ミューミューさらに声高に鳴きたてる子猫を、コチカが後ろから見ていて、
にゃ〜〜、にゃ〜〜、と力なく鳴いている。
気の毒に…嫌がることはやめときなよ、と言っているように聞こえる。
明日はわが身だもんね。

* * *

子猫はトイレで用を足し、出ようとするとき、
6cmほどのトレイの縁を飛び越えようとする。
ちょっと縁の上に手をかけ、引っ込め、
反対側の手をかけ、引っ込め、
じっと見据えて、ゆらゆらしながら、後ろ足を準備しているのだろう。
それから、えい、とばかりに飛び越える。
今日のところはまだ後ろ足が引っかかったが、明日はできそう。


子猫が寄ってくると身構えるコチカに、よしよししてあげて、と言ったら、
我慢の限界まで我慢して、もうだめ、とばかり、ぴょん、と飛んでどこかに行く。
でも徐々に慣れてきているらしい。

子猫を見てからコチカを見ると、ライオンかと思うほど大きい。
この縮尺の違いよ。
見る目にすごい安定感があって、
実際のところ同居している私たち人間との信頼関係もあるのが嬉しい。

あーコチカ見てるとほっとするよ、ぺろぺろして〜、と体に手をかけながら言ったら、
ぺロッ、の、ペッ、くらいしてくれた。
ありがとう、と言ったら、今度は、べろべろ舐めてくれた。
そして、うわーっ、と大あくびをし、つきあってらんないね、といった態度で居間を出て行った。




 *  *  *  * 


7月8日(金)

朝もはよからミューミュー。。
思いがすぐにかなわないと、ミューミューウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、と伸ばす。
これがまた脳みそに突き刺さる声なのだ。
目覚ましをかけた時刻のうんと前からしかたなく起きた。

ミルクにドロドロキャット・フード。
お昼までに3回おしっこ。
ウンチはまだ出ない。

綿棒の先にオリーヴ・オイルをつけて肛門に入れて掻き出す(?)、
という方法がウェブに書かれていたので試してみたが、
お尻をぶるんぶるん振って嫌がるし、綿棒の頭が見えなくなると、
どこまで入れていいものやらわからないので、恐くなって諦めた。

心配になって獣医さんに電話で相談したら、
食事の前後におなかをマッサージしてやって、
食べ込んで行けば、1、2日中に絶対出ます、と約束してくれた。
日曜日まで出なければ、月曜日にまた相談する。

一旦キャリーに入れられても、キャリーの中の毛布を乗り越え、
キャリーの縁を乗り越え、畳に落っこち、自分でトイレにおしっこをしに行く。
何回言っても感心。。

キャリーの後ろ側に行き、襖とキャリーの隙間で、一人で遊んでいる。
狩りをしているような動作をしているけれど、
何を獲物に見立てているのだろう。

困ったことに、キャリーの毛布よりも、
私の膝の上の方がよくなってきたようだ。
いつの間にか私のお尻の後ろに体を寄せていたりする。
私が体をずらしたら、どうなるの!!!

でなければ横座りの私の折曲がった足の上、
スカートの布がかかったところへ、ちょこっと乗って毛繕いなぞしている。

毛布もペットボトルの湯たんぽで暖かくしてあるが、
もう人工的なぬくもりでは満足しなくなったということか。
本物志向なのだな。良い子だ良い子だ。

昨日できなかったトイレの縁越えは、できるようになった。
時間をかけて準備しなくても、よし行くぞ、ぴょん!くらいで、飛び越せた。
すごーい。


* * *

早い時間に散歩に出たコチカ。
折角なので門に繋いでおいた。

呼び声が聞こえたので、見に行くと、ちょうど丸っこいおばあさんが通りかかった。
挨拶などして、立ち話をしていると、玄関に繋がれているチェリーがウォンウォン呼んでいる。

いつもそのおばあさんはちょっとしたプレゼントをあげるらしく、
チェリーはそれを期待しているのだ。
ちょうど出てきたチェリーの奥さんは、しかたなくチェリーに伴って来た。

チェリーがおばあさんに挨拶しようと近づくと、
座って見ていたコチカが、シャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

あ、ほら、コチカちゃん恐がっている、とチェリーの奥さんがチェリーをけん制したが、
違うのだ。
心ひそかにチェリーに好意を抱いているコチカは、
チェリーが他の人のそばに嬉しそうに寄っていくと、気に入らないのである。

その証拠に、背中を丸くして体を引いているわけでもなければ、
チェリーはもうおばあさんから離れているのに、まだシャ〜〜をやめない。
チェリーも、コチカが威嚇しているのではないことがわかるのだろう。
平気な顔をしてコチカをそばで見ている。

チェリーとの関係も進歩してきている。
以前、まだコチカがチェリーを恐がっていた頃、
コチカがちょっとでも不快感を示して、にゃ、と小さく言っただけで、
チェリーは身を引いていたのだ。

* * *

夕方。
コチカの散歩が終わってから、子猫のお食事タイム。
キャリーの蓋を開け、子猫を抱き上げると、やったー!ウンチだ!

3つ折りになっていて、全長4.5cmほど。
これって結構出たと考えていいのでは。

でも寝ている間にどのようにしてこんなに人の手で曲げた粘土細工みたいに
きれいに三つ折りになったのだろう。


横になっているコチカの顔のそばに、子猫を寄せてみたときのこと。
子猫は果敢にコチカの耳を触ってみたり、首筋の手足をかけて上ろうとする。
私はコチカの体を撫ぜてやっていた。
コチカは、な、何を、という表情をしながらも、がんばって子猫の様子を見ていた。
そして我慢の限界が来たのだろう、ぴょん、と立って居間を出て行った。

急に残された子猫は、きょとんとした表情で、コチカがいた場所の匂いを嗅いでいる。
そしてぬくもりのあるだろうその場所に、そーっと座ってみていた。

* * *

今日は早く寝よう、と言うことで、早く子猫にご飯をやって寝たいのに、
こういうときに限って、起きない。

さっきから何度もキャリーを覗くのだけど、3回とも違う格好で寝ている。
ということは眠りが浅いときもあるのだろうに、起きない。
夕方、結構長く起きていたし、あちこちうろうろ歩き回ったせいかな。

キャリーの覗き窓(?)を開けると、びくっとしたように、子猫は目を覚ました。
あくびを立て続けに5回くらい繰り返してから、まん丸の目を見開いたままキャリーから出てきた。
自分で這い登って、ぽこっと畳に落っこちる。

用意していた暖かいミルクが冷めてしまっていたので、
片手に子猫を抱いて台所へ行き、温め用コップのお湯を入れなおす。
そして居間に戻り、ティッシュを引き抜く音を聞くと、
あ、ご飯の音!とばかりに、うにゃーワーアアアアンと声を上げる。
空気の多い愛らしいソプラノ。
そんなこと言ったって、まだミルクが十分温まっていない。
私の手を引っかきしがみつき、おっぱいはどこだ!と探しまくる。
哺乳瓶の乳首を顔の前に持ってきてやっても、
気づかなくて、手で払い落とした。
早く起きないから、パニックするんだよ。
ようやく哺乳瓶の乳首を口に含んだ。
ごくごく飲む。
一気に半分飲んだ。
すごーい。
これまでは、どんなに猛スピードで飲んでも、3分の1くらいだったのに。

*

ちょっとはお腹にものが入って気持ちが落ち着いたのか、
膝の上で、ひっくり返って宙を掻いて遊んでいる。
かわいいなあもぉ。。

それから膝からころりと転げて、どうするのかと思ったら、
居間の隅にしつらえたトイレに行き、
ペットシートの端を掻いている。
いったい誰が教えたのか。
そして、座った。
黄色いしみがずわーっと広がる。
大したもんだねえ、と夫と感心する。
もうトイレは完璧らしい。


*

しばらく遊んだり、夫の膝の上で毛繕いをしたりして…
…もう手を舐めて顔を拭っている!

とどめにドロドロキャット・フードを8粒分ほど食べて、満足。
超特急で夢の世界へ。




 *  *  *  * 


7月9日(土)

土曜日だというのに早くから起きて〜起きて〜、と言いに来るコチカ。
しかたなく夫が起きていったが、一旦目が覚めてまた寝ようとした私ももう眠れない。
うぉ〜、と低くうなりながら……コチカだったらこうするところだ。
うぉ〜の代わりに、あーあ、と思いながら着替えていると、
子猫のキャリーからも、元気一杯な声が上がってきた。
あー正真正銘の朝なのね。。

* * *

子猫は今朝のおしっこは失敗した。
夫が、トイレの縁で遊んでいるのだと思って見ていたら、
おしっこしたくて縁を乗り越えようとしていたらしく、
間に合わなくてもらしてしまった。
夫よ、あなたが悪い。

何回かに分けてミルクを飲んで、
例によってドロドロキャット・フードを食べさせる。

横になっているコチカの尻尾に近づいていって、
じゃれるのかと思ったら、あろうことかお尻に鼻先を突っ込んでいる。
正真正銘のお尻…肛門…である。
コチカは動かない。
ったくもー。
そういうときこそ逃げなさい!

子猫をやめさせても、また同じところに行ってしまう。
きっと暖かくて母親を思い出させるのだろう。
でもだめ。汚すぎます。
コチカのおなかに顔を突っ込んでやると、
コチカの顔の方に寄っていって、手をかける。
コチカは少々痛かったのか、うわっ、と言って頭を振った。
そして立ち上がり、なんだこいつ、と言わんばかりに子猫を一瞥して出ていってしまった。

ポツンと残された子猫。
とってもかわいそうだったけれど、だめ、お尻は汚いの、
と指先で子猫の頭を撫ぜながらはっきりした口調で言うと、
両手を挙げて私の手に向かってきて、噛み付いた。
言っていることがわかって、頭に来たってわけ?
かしこい猫である。
もちろん人間の言葉がわかるわけはないけれど、
コチカがしているように、生体のエネルギーの種類を識別できる、
ということなのだろう。
こういうまともな感受性って、普通なのかもしれないけれど、やはり感心してしまう。

*

まだお皿からは上手に食べられない。
三角のキャット・フードのとんがったところをちゅーちゅー吸うだけなのだ。

ドロドロキャット・フードを口に持っていってやると、いくらでも食べるので、
大丈夫かと思っていると、そのうち口を開かなくなった。
よほどおなかが空いていたのね。

子猫は大概、ミルクを飲んだら、ぼーっとして、またミルクを飲んで、
ということを繰り返すが、ぼーっとしている間に、おしっこをさせよう、とか
体をさすってあげよう、とどうも邪魔をしてしまうように思う。
なるべく早く作業を終わらせよう、と思う人間の邪心によるものだけど、
他のことをしながらも、できるだけ子猫の思考を邪魔しないようにしなければ、
と思う。

* * *

市販されている『子猫用哺乳瓶』を買い求めた。
乳首の大きさとか全然違う。
よく今まで我慢していたこと。
それにしても、じゃあ、あの小さい哺乳瓶はいったい何?
ますます不思議。

* * *

ときどきかんしゃくを起こしたみたいに、鳴き叫び、人間の手に爪を立て、指に吸い付いて離れなくなる。
哺乳瓶をあてがってやっても、
ち〜が〜う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
と思い切り叫び、人間の手にしがみつく。
まるでスイカに体全体でかじりついたカブトムシさながら。
このときには、実のつまった声質のドラマチック・ソプラノである。
何がどうあっても母親がほしいのだろう。
ものすごい必死さ。
爪を出した手を顔にぎゅっと当てていたりするが、きっと本人は何をしているかわかっていないはず。
哺乳瓶を暖め直して、何回か口元に持っていくと、
3度目くらいには、きっと疲れてどうでもよくなるのだろう。
大変な勢いで吸い付いて、やがて放心したように口を離す。
キャリーの中、湯たんぽで暖めた毛布の上に下ろしてやると、
ぼーっとして座っている。
今までの大騒ぎがしていた子猫とはまるで別猫みたいになって。

子猫がかんしゃくを起こしている間、
コチカがうるさそうな顔を私に向ける。
子猫に向けるのではなく、私に、である。
なんとかしてくれ、って?
コチカ、助けてよ。


* * *

子猫がおしっこをしてトイレの縁を越えるのに、
飛び越えたいので、どうすればうまくいくか、じっと考えている。
昨日はうまくいったのだが、今日はまた要領を忘れたのだろうか。


その様子を、コチカと夫と私とで見ている。
じっくりと時間をかけて考えている風な子猫。
縁の向こうに座ったまま縁の向こうを見据えている。
もじもじと体を揺らせるので、さ、行け、行くか、それ、とか人間は思っている。
コチカはどう思っているのか。

そしてようやく、ジャンプ!
でも後ろ足が残った。
やれやれ、と人間2人が思ったとき、
コチカは、Rrrrrrrrrrrrrrr、と捨て台詞を吐くように言い、
立ってポテポテ歩いて出ていってしまった。
あーばかばかしい、と言ったようにも見えるのだが、
興味津々でずっと見てたくせに。

……と思うのは人間の体験から来る勝手な思惑だが、
実際のところ、コチカはどう思っているのだろう。

コチカが捨て台詞(?)を吐いたタイミングが面白いと思うのだが、
子猫がようやく縁を乗り越えて、やれやれ、
と人間が思ったのとほぼ同時にGrrrrrrrrrと言ったのだ。
人間のように応援する気持ちにもならないとしても、
すでに始まっているひとつの事柄が、ある程度時間がたてば終わる、
というのを予測していて、それを期待しながら、見ていたのでは、と思う。

* * *

子猫がおしっこをしているところを、じっと見ているコチカ。
し終わって、子猫がトイレから出て行くと、匂いを嗅ぎに行く。
そして、うぉ〜、と行って立ち去る。

コチカはいつもの通り、ウンチを申告するが、
じゃあトイレ行こ、と私が抱っこしようとすると、一瞬身構える…ような気がする。
いつも少々身を引くのだが、それは幼少時代に、
ウンチ、というと私が殺気立ったり焦ったりしていたので、
思わず身構えるようになってしまったのだと思う。
そのことに気づいてからは、私はことさらゆっくりコチカに近づき抱っこし、トイレに行く。

でも、子猫を見ていてのコチカは、少々違う。
猫なりに、子猫でも自分でしている、と思うかも知れなくても、
では自分ができないのはなぜ、とは思わないだろうし、
まして卑屈になったりもしないだろう、と信じているが、
でも、???が一杯頭の中にあるように見える。

まあでもそこまで考えないよね。
そこまで複雑な思考ができないから、というのではなく、
生活に不必要なことは考えないだろうから。

* * *

子猫はいつの間にか、キャリーの蓋の上に上ってじっとしている。
眠くなってきたのだろう。
キャリーの中に入れてやると、暖められた毛布に手を伸ばし、
そのまま目を閉じ、だんだん頭が下がっていった。

もう子猫にとってキャリーの中は、
安全で快適に眠れる場所、だということになって決めているのが、面白い。

トイレの縁を跳び越そうと、
じっと着地点を見つめる子猫

それを見つめる

おやじコチカ



 *  *  *  * 


7月10日(日)

朝から夫が子猫の食事の世話。
夫がミルクを暖めなおしに台所に行っている間に、
自分でトイレに入り、おしっこをした。
えら〜い。

2度目の食事。
体重を量ってみた。
350g。
その後、おしっこをしたので、再度量ってみると、
340g。
10g、10ccもおしっこするの?
その後、ドロドロキャット・フードを食べたので、
また戻ってたぶん350gくらい。

* * *

夕方の食事。
ミルクを飲んで、しばらくうろうろした後、
トイレだろうと思って、声をかけながら体を持ち上げたら、
みゅわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、とかんしゃくが始まった。
生体である人間の手に触れると、こうなるらしい。
体をボールのように縮めて、私の手がなければ自分の体を、頭を抱き、
自分の足の指が口に触れると、夢中で吸う。
哺乳瓶をあてがっても、何度も跳ね除けて抵抗する。
でも、
今回はコチカが入ってきたので、なんとなくコチカに気を取られ、
かんしゃくは収まった。


*

おしっことウンチ。
2度目の自力ウンチを目撃。
なんだか自慢したい気分。

* * *

子猫フィーバーにもそろそろ慣れてきた。
コチカも、もううちはこんなもの、という風に思っているようだ。
今のところ1日数回の食事以外は子猫は寝てるし。

コチカは居間に入ってくると、キャリーの中を覗くようにして匂いを嗅いでいる。
みゅー、とでも声が聞こえようものなら、私のところに来て、にゃー、と伝える。
はいはい。教えてくれてありがとう。

* * *

夜、コチカ発作。
(そのころコチカは、なにかをきっかけに怒ってすごい勢いで噛みつくようになっていた)
やはり落ち着かなさが募っているのだと思う。
夫が見ていたノートPCを閉めたとき、バチン!と音をたてた。
寝そべっていたコチカは驚いて、うにゃっ!!!と声をあげた。
そのまま頭を持ち上げたまま私がどう出るか伺っている様子。
私は私じゃないよ、○。○○(夫の名前)だよ、というと、
……。
と思考が停止した模様。
夫が、コチカ、怒らないで、と言ったが、私が謝るように言うと、
コチカ、ごめん、と夫が言った。
コチカは耳をピーンと夫の方に向け、舌で鼻先を舐めている。
これでコチカの気持ちは治まったようだ。
私はそっと背中を撫ぜた。




 *  *  *  * 


     49 ⇔ 50_その2