4月1日(金)
おとといの一件があってから、
コチカと人間、なんだかいたわりあっている。
そういえば、コチカは、外に行く時間で、
外〜外〜外行こう〜、と騒いでるのに、
私がすぐに応じないときには、うにゃ〜!!!と激しい声をあげていたのだが、
それが馴染みとなって、最初から、うにゃ〜!!!と来るようになっていた。
もうちょっと、コチカの都合も考えて、段取りよくすべきだ、と反省。
互いの関係を見直すチャンスというのは、
忘れた頃に、ごく自然にやってくる。
これがなくなったら、もうおしまいよ〜なのだろうな。
* * *
お天気がいいので、門の柵に結わえておくと、
4歳の近所の子供が見に来た。
コチカは、はーっ!!!と威嚇。
柵越しだったので、そう怖くもなかったのだろう、
子供は立ち上がりながら、あ、歯があった、と言った。
夕方の散歩。
チェリーんちの玄関脇に置かれたバケツの水を飲むニャオンに、
コチカが近づいていくと、ニャオンは、水を飲むのをやめ、
CH"〜っと、威嚇した。
その一発で、コチカはたじっ、となり、そうっとその場を離れた。
あまりの威厳に恐れ入ったのか、体の動きがぎこちなくなって、
南の島に生息するぎくぎく動く爬虫類みたいでおかしかった。
* * * *
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4月2日(土)
朝の散歩。
週末だが、私と。
丸っこいおばあさんとお話。
なぜ丸っこいおばあさんかというと、
小柄でふくよかで、めがねをかけていて、
絵に描いたようなやさしい感じのおばあさんだからである。
私も年を取ったらあんな風になりたい、と思うが、まあ無理。
痩せてとんがってしまう家系だから。。
そのおばあさんが健康のためにだろうと思うが、
日に何回か、手押し式買い物キャリーを押しながら、
散歩しているのに、行きあい、お話するのである。
今日は、おばあさんの友人だった別のおばあさんとその方の犬の話を聞いた。
げんちゃんというスピッツをたいそう可愛がっていたのだが、
ものすごく太っていて、足の悪かったおばあさんが、
げんちゃんを踏んでしまった、という話。
おばあさんによく懐いていたげんちゃんは、
いつもおばあさんの足元に寄ってきていたのだが、
おばあさんがどういう体勢だったかはわからないが、
げんちゃんを踏みつけてしまい、内臓どころか体の皮も破裂して、
辺り一面血の海となり、それはもう大変な騒ぎだったのだそうだ。
げんちゃんの上に転んでしまったわけでもなさそうで、
よほどうまい具合に、げんちゃんには悪い具合にげんちゃんを踏んでしまった、
あるいはそれが運命だったに違いない、と思えるほどに、
うまく踏んでしまったらしいが、それからのおばあさんの嘆き方は、
丸っこいおばあさんでさえ、もらい泣きするほど。
あまりにおばあさんが悲しそうなので、
娘婿さんがまた新しい犬を買ってきてくれたのだそうだが、
世の中、想像だにできないこともあるのだな、とつくづく思った。
……てな話を長々としている人間のそばで、おとなしく話を聞いていたコチカ。
丸っこいおばあさんは、おとなしいのねえ、と言ったが、
丸っこいおばあさんの穏やかでよどみない話し声が
コチカの耳にはじっと聞いていて心地よかったのかもしれない、
と思い、この猫、音楽が好きなんですよ、と言ったら、
あらら、上等だこと、と丸っこいおばあさんは丸っこく笑った。
* * * *
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4月3日(日)
樹林公園で。
桜がちらほら。
寝そべっている公園の住猫。
そばによって行っても、耳さえぴくりとも動かさない。
よく慣れたもの。
* * *
寝ているコチカ。
うっすら目が開いている。
顔をそうっと近づけたら、白い幕がかかり切らない黒目が、
私の方にすぅっと動くので、またタヌキ寝入りだな、
と思ったら、急に目が開き、ぐrr、と言いつつ、私と視線をがっちり合わせた。
夢うつつの中で、目の前に来たものを認識したことが、
意識を刺激し覚醒した、というプロセスを見た気がした。
* * * *
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4月4日(月)
夜中にまた発作。
でも、ひそひそ声ながら、だめでしょ!と言ってやると、すぐ収まった。
* * * *
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4月5日(火)
お散歩日和。
散歩の後、門に繋いでおくと、
門脇の植え込みの中にもぐりこみ、休憩。
でも人間の外出の時間が来たので、無理やり家の中へ。
ふーっ、と激しくため息を吐く。
* * *
夕方。
もう散歩の後、しばらく門のところにいることが習慣になったらしい。
帰ってくると、所定の位置に座っているので、そのまま、リードを門に結わえた。
今日はまたも寒いし、時間がたったので、
中に入れようと出ていくと、リードが門にからまって、
ぎりぎりの長さになっていた。
リードを解いたタイミングで、誰か外が来たらしく、一目散に駆け出した。
私も続く。
駐車場の隅に顔を突っ込んでいたけれど、
誰もいないし、寒いので無理やり家へ。
腹立たしい様子のコチカ。
引き戸のガラス越しに眺めていた私と目が合った。
何?というコチカ。
* * * *
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4月6日(水)
昨日の夕方のストレスか、また発作。
今度は少々なだめるくらいでは、収まらなかった。
ちょっと考える様子をするのだが、どうにも抑えきれないらしく、
何度も手を狙って、うにゃ〜、と噛み付いてくる。
夫を起こさないように、階下へ誘う。
台所へ行くとご飯に向かい、猛然と食べ始めた。
それから窓の外を点検に。
私は居間にいたが、全然来ようとしない。
* * *
夕方、風呂場の網戸を引っかく音。
行ってみると、隣との間の塀の上に、時々来る猫が座ってこちらを見ている。
それが、コチカは気に入らないのだ。
ナイロンの糸の網戸は、コチカの爪跡がいっぱい。
まだこの網戸を張りなおす気力はないので、抱っこして引き剥がしたが、
大変に残念無念な様子だった。
あー気の毒。。
なんかどうもコチカのしたいようにさせてやれてない。
今夜はおとなしく寝てくれるか。。
* * * *
▲
4月7日(木)
夜中、ウンチ〜と言いにきた。
1回目はすぐにトイレに連れていってやったが、
2回目はくじけた。
お尻を触ると、そう急を要しないので、
大丈夫大丈夫、寝なさい、と布団を上げると入ってきた。
読みは正解で、起きてしばらくしてからでOKだった。
* * *
とても暖かい日。
風もなく、家の前の通りは時間が止まったみたいになっている。
種類の違う花の匂いが、あっちからこっちから漂ってくる。
こんな日は年も取らないのかも知れない、ととんちんかんなことを考えている私のそばで、
コチカはぜ〜ん然関係ない世界で、いつものように他の猫の匂いを物色している。
隣のお宅に庭から、あ〜、と聞きなれた声が。
アスカである。
Grrrrrrrrr!庭へかけこもうとするのをけん制すると、
門の下のところに座り込むことしばし。
なんとかなだめて、駐車場に行こうと促すと、
GrrrrrrrrrGrrrrrrrrr、と文句を言いながらも駐車場へ。
しかし、気の無い様子で、駐車場界隈をふんふん匂いを嗅ぎ、
戻ってくると、またアスカのいるお宅の前に座り込んでしまった。
でもまあいいのである。
気持ちのいいお天気だし、ぼーっとするにはもってこいの日なのだ。
家に戻ってから、門の柵にリードを結わえると、
コチカはいつものように、ブッシュ(?)の中でくつろいでいた。
1時間半ほどたった頃に、中へ入れ、おしっこをさせようと抱っこすると、
黒く小さな虫が、毛の表面でもじもじ動いている。
これは何?ダニ?
ダニにしては丸くなく卵型なのだけど。
でも体のあちこちに10匹くらいいた!
なんだこれ?
急激に暑くなったので、やはりダニなのだろうか。
ユニチャームのダニ・ノミスポットを買ってきた。
* * *
家にいてもなにか落ち着かない。
階段下の棚の上に、座り込んで、ずっと窓の外を見ているときはいいが、
どうかすると、なにやらぶつぶつ言いながら、うろうろしていたりする。
私が後をそっとつけていくと、玄関に来たところで、私に気づき、
三和土に降りて、Grrrrrrrrrゴロン、とすねたようにしている。
何か辛いのだろうけど、仕草がかわいいのだ、やっぱり。
* * * *
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4月8日(金)
暖かく、桜が満開で。
しかし私は心ここにあらず……おお!と気づいたことがある。
ときは春、
日は朝(あした)、
朝は7時、
片岡に露満ちて、
揚げひばりなのりいで、
かたつむり枝に這い、
神、空に知ろしめし、
すべて世はこともなし。
というロバート・ブラウニングRobert Browning (1812 - 1889) の詩を、
毎年春になったら、目覚めの一番に唱えよう、と決めているのに、
今年は、さっぱり忘れていた。
コチカと散歩する家の前の通りには、
花にらの白い花が咲き、甘い匂いが漂う。
家とは反対方向の行き止まりには、ソメイヨシノが満開で、
まるで道路がピンクの壁に遮られているかのよう。
チェリーんちの玄関先のコンクリートの割れ目には、
スミレが根を落とし、狭いながらも健気に瑞々しい紫色の花を咲かせている。
その向かいのお宅では、生垣に淡い緑の新芽がまぶしく、
界隈では一番最後に花開いた薄桃色の梅の木には、
ごつごつの枝に愛らしい小さな葉がねじれるようにして顔を出し、
角っこのお宅のチャコちゃんちには、
桜草が、白いビロードを被った蕾を割って咲き、
いまやのびのびと濃淡のついた王冠を一段一段重ねていっている。
チャコちゃんちの前を通り過ぎたお宅では、
桃の花だろうか、桜に似た濃いピンクの花が満開になろうとしている。
そしてそのすべてに、陽がさんさんと平等に降りかかって……
いるのだが、私は心の底から言祝ぐことができない。
植物の無心で健気な気迫がいつものように迫ってこない。
なぜか。
理由はさっぱりわからない。
いや、わかっている。
否定もせず肯定もせず。
いや、肯定しているからこそ、
何か心が止まっているみたいになっているのだろう。
わからないようでいて、自分のことはやはり自分が一番知っているはず。
もはや知らない振りができないこともわかっている。
* * *
ユニ・チャームのダニ・ノミケアを投薬した。
痒がるのにまたも懲りずに、とは思うが、
夏になったら病院に相談しようと思っていたものの、
春なのにこんなに暖かく、昨日のように虫がついていたら不気味なので、背に腹は変えられない。
夜中までに乾くように、朝の早い時刻に投薬した。
ときどき自分の後足で掻いているが、そうも痒がらない、
と思っていたが、夜遅くになったら、
ちょ、ちょっと掻いて〜、と体を摺り寄せてくるようになった。
今夜寝られるかなあ。。
* * * *
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4月9日(土)
昨日、ダニ・ノミ退治薬をつけたので、夜中は眠れないもの、と覚悟していたが、
全然起こされなかった。
前にもユニ・チャームは使ったことはあるのだが、
どうして急によくなったのだろう???
* * *
暖かくなったので、階段下の棚の上で窓の外を見ている時間が長くなった。
気持ちのよい空気を見ているのは、命の洗濯になりそうだ。
* * *
人間二人は、樹林公園にウォーキングに行った。
桜や遠目にはレンギョウかと思うような黄色い花、雪柳が満開で、
よいお天気だったし、お花見をかねて人々が大勢いたが、
人々の喧騒よりも、花たちの華やぎの方が断然騒々しく思えた。
* * * *
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4月13日(水)
あっという間に今日。
この月日のたつのの速さは何?
昨日は1日雨だったので、
夜にはってコチカを抱っこして外を散歩した。
いつも歩く道を、ゆっくりコチカが匂いを嗅ぐペースに合わせて、
と言っても、あんまりじっくり嗅がせていると、降りる〜とごねるので、
適当なところで切り上げ切り上げ、して戻ってきた。
あー気ぃ使った。。
* * *
やっぱりコチカはおしっこを申告するように思う。
昨日の夜も、やけに甘えたような声を出して、
まとわりつくな、と思っていたのだが、
ふと、おしっこ?と聞いてみると、
?と一瞬思考が止まったような顔をしてから、
そうそう!という風にアップテンポで私に近づき、
すりすりすりっ、と思い切り頭と体をこすりつけたのだ。
*
そういえば、雨が降っていてほとんど寝ていたらしいコチカは、
おしっこをさせようとおなかを触ると、
ごろごろといくつものウンチが出番を待っていた。
これは夜中に来るぞ、と覚悟を決めていたが、そうでもなく。。
やはり雨が連続すると、調子狂うのだろうな。
* * * *
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4月14日(木)
夕方の散歩。
隣のお宅にアスカがいた。
門の下の隙間から対角線に座って、
コチカを誘うアスカ、行きたいコチカ。
しばらくそのままでいたが、
そのまた隣の人が2階の住居から降りてきたのを潮に、私はコチカに声をかけた。
駐車場行こうよ、と何回か言うと、
後ろ足を精一杯伸ばして、背中をアーチ型にしながら、
私の顔を見上げる。
真っ黒な目。。
でも何回か目には、歩き出した。
しかし歩き出しながらも、立ち止まって後ろを振り返り、
後ろ髪を引かれる……といった様子。
何度か行きつ戻りつしていると、
ようやく歩みが速くなった。
いつも行くコースをなんとなくおざなりにまわって、
カツオブシカツオブシ。。でおしまい。
* * *
本日の歌は、
っひっかるーっ海、っひっかるっ大空、
っひーぃかーるーっだーいちー♪、である。
これが何の歌かわかったら年齢もばれてしまうが、鉄人28号である。
私は、見た記憶があるものの、よく覚えていない。
歌も断片的に覚えている程度。
日本の端っこで育った夫は、
どうやら放送されたのが、うんと後だったらしく、
歌を全部覚えていたので教えてもらったのだ。
改めて歌ってみると、力強く、光にあふれた良い歌である。
* * * *
▲
4月15日(金)
夕方。
縁側にいたらしいコチカが、
Grrrrrrrrrrrrひや〜〜〜〜ひや〜〜〜〜〜〜、
と大声を上げながら歩き回っている。
何事かと思いきや、アスカが居間側の駐車場の塀の上にいた。
庭から回り込んできたのだろう。
しばらくコチカはパニック状態にあった。
その興奮がさめた頃、コチカは私に擦り寄ってきた。
アスカいたね、というと、え?!なんで知ってんの?というような目を向けた。
* * *
夕方の散歩。
玄関を出たとたんに、
コチカはフェンスと家の間を覗き込んだ姿勢のまま固まってしまった。
何かと思えば、トラちゃんが向こうからやってきていた。
出窓の下の狭い場所からトラちゃんはこっちを見ている。
光が差し込まないので、誰だかわからない。
しかしこの辺でダーク系の猫といったら、トラちゃんしかいない。
トラちゃん?というと、コチカは、GRR!と言って、お尻を上げた。
そして、なんだトラか、というそぶりで、門のフェンスを潜り抜けた。
アスカだと姿が見えなくても匂いでわかるくせに、
トラちゃんだとわからないのだろうか。
それとも別の思惑があって、ずっと待っていたのだろうか。
違うな。
誰が来たかがわからないので、じっと見ていたように見えた。
トラちゃんはまだ発情もしていない子供なので、匂いがないのだろうか。
というより、トラちゃんにはあんまり興味ないの?
* * * *
▲
4月17日(日)
人間二人が出かけようと準備にばたばたしている間は、
コチカも人間の後ろについてうろうろしていたが、
じゃあ、コチカお留守番ね、と声をかけたのがいけなかったのだろうか。
いざ出かける、という段になって私がコチカを振り返ると、
コチカは、ゴミ箱の後ろに隠れた。
こんなことは初めて。。
* * *
食欲が落ちている。
草を食べるようになった。
花にらなんか苦いだろうに。
* * * *
▲
4月18日(月)
発作を起こした。
夕方の散歩は少々短かったが、それでもさして問題はなかったと思う。
それ以後である。
トイレを洗って風呂場に干してあったのが、乾ききっていないこともあったし、
私が遅くに帰宅したので、自分の夕飯を優先して、トイレをセットしなかった。
なので、コチカがウンチを申告しても、人間のトイレまで行かなければならなかった。
それが2回。
その後、コチカはウンチを申告せず、1個、粗相した。
しかし、遠くに行きたくないのだ、とわかっていた私は、何も言わなかった。
夫が帰ってきて、私にPC用ソフトのセットアップの仕方を講義した。
PCを再起動させたりする間、私は寝転がっていたのだが、
私の頭がある場所に、コチカが寝そべっていて、
押入れの襖に付けた私の頭と、絨毯に押し付けた背中の間に、
コチカの足があった。
で、夫に呼ばれて起き上がったそのとき、いきなりコチカが、
うにゃ〜〜〜〜!!!と怒りの声を上げ、怒りの目を向いて、私に向かってきたのだ。
いつものように腕に噛み付いた。
私はごめんごめん、を連発したが、コチカはセーターの袖口に噛み付いて、放さない。
いろいろな言葉を言って、なんとか私からコチカを引き離すと、
この怒りをどこに向けたらいいのか、という表情で、コチカは口を放したので、
私はさらにあやまりながら、コチカを抱っこした。
少々嫌がったがおとなしく抱かれた。
それからGrrrr、といいながら、出ていって、ご飯を食べた。やけ食いである。
* * * *
▲
4月19日(火)
朝からPC画面から離れられなかった私の横で寝そべっていたコチカ。
突然、うにゃっ!、と声をあげた。
コチカを見ると、目が怒っている。
また噛み付かれるかと思ったが、私はコチカに触れていないし、
なんにも言っていないので、どした?と強い調子で声をかけた。
コチカはGrrr、と言うものの、私が悪いのではない、と思っているらしい。
しばらくあいまいな顔をしていたが、また顎を落として寝た。
どうしたのだろう。
夢でも見たのかな。
* * *
遅い朝の散歩。
隣のお宅の門の下のわずかな隙間に、コチカが寄っていきしきりに匂いを嗅ぐ。
すると、チキチキと白い爪の生えた黒い手が、門の下の隙間からちょこちょこ出てくる。
アスカである。
きっと向こう側に寝転がっているのに違いない。
コチカだ、と思ったので、手を出してみたのだろう。
出てきた手をじっと見つめるコチカ。
あーこういう日に限ってカメラを持っていない。。
* * *
夕方の散歩。
駐車場を過ぎた辺りで、コチカは、Grrrrrrrr、わぅ〜、と叫びだした。
アスカを呼んでいるのだ、という気がする。
果たして、アスカが十字路の角のお宅の塀にいた。
走り寄るコチカ。
お尻をかーっと上げ、そう長くない尻尾をピーンと立て、
上にある枝に、頭をくっつけ、あ〜、と言いながらうろうろするアスカ。
うれしい逢瀬のとき、という感じ。
一通りうろうろすると、アスカは塀の上に座った。
コチカは下からじっと見つめている。
そのまま動かず。
人間が余計な手を入れない方が良いと思って、
アスカの名前も呼ばなければ、コチカを抱っこして塀に登らせてもあげない。
リードも揺らさないようにして、ぼーっと待つ。
こんないい飼い主がどこにいる?
やがて向こうの角から、最近の顔なじみである女性が来た。
あらあ、という顔をしつつ挨拶。
恋する相手なんですよ、と説明。
ここからはちょっと離れた場所になるチェリーんちの辺りで、
ニャオンがこちらをじーっと観ているので、
向こうも見てるし、と指差して笑いあった。
それがきっかけになったのか、またアスカが、あ〜、と声を上げた。
コチカはたまらず塀に飛びついたが、当然上まで届かない。
ここは出番とばかりに、コチカの体を上まで持ち上げてやった。
後ろ足の爪は、ブロックとブロックのつなぎ目にかかっていて、
健常な猫なら、うんと踏み切れて登れるのだろうが、
私にとっては都合の良いことに、コチカにとっては不幸なことに、
筋肉の弱い足では、それができない。
なんとかアスカに鼻先を向け、うにゃ〜、と言っているのだが、
アスカはというと、じーっとコチカの顔を見ているだけ。
でもその場から少しも動こうとしない。
やがて疲れたのか、コチカは塀から体を放し、私にもたれてきた。
下に下ろすと、すっかりあきらめていたように、歩き出した。
十字路を過ぎた頃に振り返ると、アスカは正座をして、ずっとこちらを見ている。
きっとアスカももっとコチカと親しくしたいのだろう。
* * * *
▲
4月20日(水)
朝から雨が降りそうだったので、早めに散歩に出た。
お掃除する人も犬の散歩に出た人も、
みなさん万事お繰り合わせの上、だったようだ。
チェリーとマー君たちも早かった。
* * * *
▲
4月21日(木)
夕方。
チェリーとまー君が散歩から帰ってきた。
チェリーは、わ、コチカだ!という感じで、ダダッと走ってくる。
これではコチカが怖がると思い、
私はしゃがんでチェリーの気を引こうとしたが、あっさり虫……じゃなくって無視された。
そのままの勢いでコチカに向かって行ったので、
案の定、コチカは、はgh〜〜とやった。
コチカも驚いたろうが、これじゃ、チェリーの恋心も薄れてしまうだろう。あーあ。
* * * *
▲
4月22日(金)
明け方はいつも起こされる。
このペースになかなか慣れないのは、就寝時間が遅いからである。
万年寝不足が解消されないまま。
今朝も何回か目の、ねえ起きて起きて〜、の声に、
とうとう怒り心頭に発した私は、
内緒の声ながら、いい加減にしなさい、もう寝なさい!!!と気分を荒げた。
すると、コチカは、ふぅっ!!!、と捨て気迫を見せ(?)、
しぶしぶ私の枕の横に丸くなった。
最初っから寝る気になってちょーだいっ
* * *
朝の散歩。
十字路の駐車場にあるアパートの入り口にアスカがいた。
しかし、敷地の奥である。
行きたいコチカ。
アスカは誘っているのかどうか、さっと私たちとは反対側に走り去った。
私がいるせいで、そちらにいけないコチカは、
きびすを反し、アパートを逆から回りこむように走り出した。
向こうがダメなら、こっちから、と猫なりに考えているのだ。
そして反対側にまわっていくと、果たしてアスカはいた。
しかしコチカはアスカを認めたのに、枯葉の溜まった場所で、夢中になって匂いを嗅ぎ始めた。
あれれ?アスカはいいの?
アスカはというと、厳しい顔をしてこちらをじっと見つめ、それからまた来た道を戻っていった。
コチカの気持ちの変化をアスカは理解したのかしら。
草をよく食べる。
ちょっとではなくて、本気で食べている。
花ニラの花まで食べている。
家に入ってから、嘔吐。
毛だまが出ている。
もう体を触るだけで、手に毛がつくくらい。
あー、抜け毛の季節到来。。
* * * *
▲
4月23日(日)
午後過ぎてからの朝の散歩。夫と。
ねえ、アスカが変だよ、と夫が窓から私を呼んだ。
コチカがくんくんしにいって、顔の毛が触るくらい近くに来たのに、
アスカはうんともすんとも言わずに寝ている、というのだ。
反応しないアスカに、コチカもそそられるものもなく、それっきりで通り過ぎた。
そりゃ変ね、と見に行くと、隣のお宅の門の下に寝そべったまま、元気のないお饅頭顔。
手を鼻先に出しても、いつものように警戒するわけでもなく、
猫らしく両手を丸めてもいず、あいまいに胸のところに当て、確かに変。
でも急を要するわけでもなさそうなので、私は家に戻った。
出かける用意をしているところだったのだ。
しばらくすると、アスカ、元気になった。と夫は戻ってきた。
なんのことはない、空腹だっただけらしい、という。
毎日ご飯をやっているチェリーんちの奥さんが、
今朝は早朝から出かけ、さっき帰ってきたのだ、ということで、
今日の猫たちの朝ごはんはお預けだった。
奥さんが帰ってくると、待ちわびていた猫たちが、
どこからともなくわらわらと寄ってきて、
アスカもごく普通に立って歩いてきたのだ。
おなかがすき過ぎて、血糖値が下がり、それでぐったりしていただけの話なのだ。
あー心配して損したぜい、と夫。
まったくその通りで、予定していた地下鉄に乗り遅れ、
歌舞伎の第1幕目が始まってから、席につくというありさまだった。。
* * *
夜遅くの散歩。夫と。
さすがに夜は興味も薄れるらしく、事務的にぐるりとしてきただけだった、という。
夜になると、いろんな匂いも薄れるのかしらん。
* * * *
▲
4月24日(日) <トラちゃん、バイクにぶつかる> 遅い朝の散歩。というか、ほとんど早い午後。 一通り行ってきてから、 通りに面したフェンスからはみ出た植物をくんくんやっているので、 フェンスに結わえておいた。 チェリーんちの奥さんが出てきて、明るい声で話がはずむ。 タロウは他の猫と違ってお昼も食べるのだ、ということで、 ご飯をやっていたのだ。 すると、バイクが来た。 チェリーんちの前を通り過ぎたとき、にゃうん!と声が聞こえて、 トラちゃんがバイクの前から、走り去ったのが見えた。 トラちゃんはバイクの前を横切ろうと、飛び出してきてぶつかったのである。 あれではバイクは急ブレーキもかけられない。 バイクのお兄さんは、後ろを振り返り振り返りしていたが、 肝心のトラちゃんの姿が見えないので、行ってしまった。 見ていたチェリーの奥さんも、声を聞いた向かいの奥さんも、しばらく呆然とした。 私も驚いて声が出なかったが、しばらくしてからコチカに、 トラちゃん、バイクにぶつかったんだよ、コチカも気をつけないとね、などと言ってみた。 するとコチカは空気の異常を感じたのか、力なく、にゃ〜、と声を上げて立ち上がった。 私が近づいてリードをといてやると、力の抜けた感じで、私の足にすりすりした。 きっとコチカも心配になったのだろう。 コチカはチャコちゃんちのガレージに逃げ込んだまま、夜になっても帰らないという。 心配。 * * * |
くつろぐトラちゃん(左)とタロウ。 この直後にバイクが来て、トラちゃんが飛び出しぶつかった。 そして人間が驚いて心配している様子を、 コチカは見ていた |
★ トラちゃんは生きていた!(06年5月12日)
* * * *
▲
4月25日(月)
トラちゃんは、まだ帰ってこないし、見つからない。
今日もまた方々を探す声が聞こえたが。。
誰かに見つけられて、病院に連れてってもらっているといいのだが。。
* * * *
▲
4月26日(火)
居間で寝そべっているコチカに、おしっこしよう、と言っても全然動かない。
おしっこしたら外へ行こう、と「外へ行こう」と言ってるのに、無反応。
いつもは目をこちらへ向けて、あ、と返事をするか、
両手を伸ばしてのびをするとかするのに。
おかしいな、と思いつつ抱っこして、トイレでおしっこさせた。
廊下へ出たコチカは、座ったまま後ずさりしてくる。
視線の先を見たが、何もない。
どしたの?と見ていると、しゃくりあげ、嘔吐した。
毛球があるかと思ったが、ない。
ただ胃液だけ大量に吐いた。
どうもトラちゃんがバイクにぶつかって以来、変なのだ。
散歩に出てもいつも行く方向に行こうとしないし。
トラちゃんは今日も帰ってこない。
東京は、午後すごい雷雨となった。
気がかり。。
* * *
夕方の散歩。
隣のお宅にアスカがいた。
門の下のわずかな隙間に、鼻先を押し付けるコチカ。
アスカの黒い手が、しゅっ、と出てくる。
飛び上がるコチカ。
びっくりしたなぁもぅ、という感じで、Grrrrrrrr、とうなる。
オス猫コチカ、スプレー(のふり)をする
* * * *
▲
4月27日(水)
朝。
雨戸を開け、網戸にして、新鮮な空気を部屋の中に入れる。
するとコチカは、新しい空気に刺激され起き出す。
窓の敷居に座り、しばらく庭を眺める。
今日みたいなきれいなお天気には、新緑が美しい。
階下に来て、紅茶を飲み、夫を送り出し、洗濯をしかける前にPCを開ける。
画面がついた頃、どどどどどど、と2階から続くひさしから音がした。
嫌な予感がして、寝室に行ってみると、網戸が開いていて、コチカがいない!
数年前に網戸を開けて出て行って以来、ガムテープを貼っていたが、
いくらがんばっても開かない網戸に学習して、
網戸を開けてみることなど諦めていたらしかったので、
人間ももう大丈夫だろうと、ガムテープを貼ってなかったのである。
うかつだった。。
さぁて、どうしようと、外に出てみたが、コチカの姿はない。
でも空中に白い毛がふわ〜、と舞っている。
これはコチカのだ。
尻尾だけ雉トラ…辮髪ネコと呼んでいる…が向かいの家の庭にいた。
やりあったのはこのネコじゃないな、と思って見ていると、
辮髪ネコは警戒したのか、立って歩き出し、うちの車にひょいっと乗って、
隣のお宅の塀に登っていった。
チャコちゃんちの奥さんが物干し台にいたので、こういうわけで、
というと、昨日のトラちゃんといい、いろいろあるわねー、
といいながら、いたら連絡するから、と言ってくれた。
もう一度戻って、駐車場に行くと、コチカがいた!
隣のお宅の塀のちょうど上に来ている、うちのお風呂の屋根の下、樋にぶら下がっていた。
上には、辮髪ネコがいて、ちょいちょい手を出している。
アイツ、あれからうちのひさしに行ったのだな。
私が探している間、コチカはずっと屋根の上にいたのだろうか。
コウノトリが運ぶ袋がぶら下がったような格好で、コチカは必死にどうにかしようとしている。
私は思わず、車のボンネットから塀に上がった。
そのタイミングで、コチカは下に落っこちた。
隣の家の敷地の中である。
あ、と思い、足元を見ると、ぎゃ〜〜〜〜、なんと高い!
私はなんということをしているのだ、とわなわなしてしまった。
車のボンネットに足を置くと、べこ、っとなった。
元に戻ったけれど。。
とにかく、コチカは隣の家に降りた。
お隣へ行ってわけを話し、庭を回り込んで、居間から追っ払ってもらったりして、なんとか捕獲した。
ネコが入り込まないように、フェンスがうまくしてあり、
コチカのいたスペースがかなり狭く、塀が高かったので、コチカは容易に動けないのが幸いだった。
エアコンの室外機の下を通るしかなかったのだが、
居間から奥さんが追ってくれたときには、コチカは捕らまることを恐れていたのだろう、全然来ようとしなかった。
だが、奥さんのお父さんが追ってくれると、簡単にこっちにきた。
室外機を潜り抜けるとき、一瞬私の顔を見上げ、つかまる!という顔をした。
目がらんらんと光り、猛っているのがわかる。
顔の両脇の毛が立って、きったなーくなっている。
でもとにかく、捕獲した。
通りへ出ると、コチカは逃げようとして、もがく。
あーしまった、と後悔しているのだ。
隣の奥さんにお礼を言って、そのままチャコちゃんちに報告に行った。
コチカは逃げようと、もがいている。
目のふちに、引っかかれた痕がある。
よく目がやられなかったものだ。
鼻の頭も真っ黒。
家の中に入ると、コチカは廊下の途中でぐったり伸びてしまった。
強烈な緊張がほどけて、どっと疲れたのだろう。
私も疲れた。。
* * *
コチカは、界隈を歩き回ったりする経験が少なく、いざ新しい場所へ行こうとすると、かなり躊躇する。
そこのところが、身体のハンディキャップに加えた、ハンディになっている。
それがなければ、去勢してないオス猫にもひけを取らない実力はあるのだろうが。
それにしても、外に行きたいのに、ずっと家の中に居させられているコチカは、
人に撫ぜてもらったりするのを、快楽の一部としている。
まるで人間に依存しているかのように見えるが、
でも、本当は、ひそかに確実に自立していて、
オス猫として戦いに挑むときの感覚も技術(?)も、忘れていない。
コチカの持つ能力を思うと、家猫として縛り付けておくのは、
本当に申し訳なく、可愛そうなことなのだ、と改めて思う。
でも、あの闘志むき出しのままでは、簡単に交通事故に遭ってしまうし。。
猫エイズだって怖いし。
* * *
しばらく居間で眠っていたコチカが私の背後から、にゃ〜、
と声をかけるので振り返ったら、なんとコチカは右目が開いていない。
樋にぶら下がっている間に引っかかれた目が、腫れてきたのだろう。
夕べ誰かに殴られた酔っ払いみたいだ。
辮髪猫にちょっかいを出されている間、
かわいそうにコチカは、反撃したくてもできなかった。
さぞや悔しかったろう、と思うが、樋にぶらさっがっている間、よくがんばった、とまた思い出した。
ちょっと休んで英気を養っただろう、独眼流コチカは、
外〜外〜外行こう〜、とやーやー言っている。
私のまん前に来て、何で行かないわけ?といきり立っている。
何言ってんだ。
さっき行ってきたでしょ、と思いつつも、そんな元気があるのが返って嬉しい気も。
じゃあしょうがない、と外に連れ出した。
すると、チャコちゃんちのご夫婦も、よかったよかった、と言ってくれた。
そこへ大家さんが通りかかったので、「よかった」の理由を話すと、
ああ、朝、ひさしの上をどどどどど、と音を立てたと思ったら、
ミルキーが屋根から降りてきたのはそれだったのね、と言った。
どうやらコチカはミルキーを追っ払ったらしい。
というか、おそらくはコチカがミルキーにケンカを売って、
ミルキーは負けるが勝ち、とばかり逃げたのだろう。
でも大家さんの見解は違う。
コチカが顔に怪我をしているのを見て、大家さんは、あんたは弱いんだから、とコチカに大声で言った。
私はむっときた。
強いですよ、塀には登れないけれど、去勢してないし、いつでもやる気満々だから、
闘志むき出して戦うんですよ、強いですよ、と言ってやった。
ふん!だ。
* * * *
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4月28日(木)
コチカの目の腫れはすっかりよくなったようだ。
さすが動物。
というか、時間の流れがきっと速いのに違いない。
しかし今日になって発見したが、右耳の脇、頭側の毛が耳に沿って1-0.5cmはげている。
爪の痕もうっすらある。
これって噛まれたのだろうか。
ある程度毛がまとまって抜けながら、爪の痕はさほどではない、っておかしくないか?
昨日ひさしの上で、どどどどど、と音を立てた後、私が外に出たとき、
白い毛のかたまりがふわ〜、と飛んでいたのは、
ミルキーの爪によるものだったのだろうか。
だとしたら、一度はミルキーと戦ったのだな。
で、ミルキーが逃げた。
ふむ。
* * *
夜遅くに帰ってきて、
見なければならないメイルを見るのにPCにかじりついている私に、
外〜外〜、と言っているコチカ。
大抵そういうときには、私の真横に猫の正座をして、
真剣なまなざしを向けているのに、
今日はなんか声の発信地が違うと思ってふと見ると、
縦長に座る(というのか)ったまま、声だけ凄みを持たせているのだ。
その体勢で、じろっ、と私を見上げるので、思わず噴出してしまった。
* * * *
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4月29日(金)
コチカはよしよししてほしいとき、私の横に来て、うにゃ〜、という。
かわいいちゃちゃ♪、と歌が始まるまでじっと私の顔を見つめ、
私が歌いだすと、そうそう、という風に目を閉じて顎を突き出す。
* * * *
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ごろろろん
5月1日(日)
明日未明の出発のために、いつもより早めに寝室に入り、
早くに起きてごそごそしている人間に、いや〜な感じを抱いているコチカ。
ぼーっと座って、考え事をしているようで、
それでいながら、目が合うと、きっ、と射るような目つきになる。